従業員による企業の不正への関与・目撃率「労務管理上の不正」が最多に

 従業員の不正や不祥事をめぐる報道が後を絶たず、中には企業に深刻な損害を与えるケースも見られます。パーソル総合研究所は、企業の不正・不祥事の実態やその要因、防止・改善施策のあり方などを明らかにすることで、企業のリスク管理や危機管理対策、コンプライアンス施策などに参考になる情報を提供することを目的に、全国の就業者を対象に実施した「企業の不正・不祥事に関する定量調査」を実施し、その結果を発表しました。
※調査時期:2023年1月30日から2月3日 調査手法:調査会社モニターを用いたインターネット定量調査 調査対象者:全国の就業者20~69歳の男女46,465人

 今回の記事では、その調査結果のポイントを見ていきたいと思います。
【実態】

  • 不正に関与・目撃した就業者にその内容を確認したところ、労務管理上の関与・目撃率がもっとも高い結果に。
  • 雇用形態別の関与・目撃率を見ると、「嘱託社員」がもっとも高く、「正社員」が続いている。職位別では、「部長相当」がもっとも高く、「係長相当」「課長相当」が続いている。
  • 設立年数・従業員規模別で見ると、設立年数が間もない会社で、関与・目撃率がやや高い傾向にある。従業員規模別では、「300~500人未満」の関与・目撃率が最多。

【要因】

  • 不正発生リスクを高める要因を分析すると、長時間労働や不明確な目標設定、成果主義・競争的な風土などが不正発生のリスクを高めていた。

【防止・改善策】

  • 人事管理における「目標の透明性(目標設定時の上司との話し合い、個人目標が組織目標と関連付けられているか など)」「従業員主体の異動(会社都合の異動・転勤の少なさ、社内公募制度の活用 など)」や「人材の多様性(女性社員や女性管理職の多さ、外国籍社員の多さなど)」が、主たる不正発生要因(「属人思考」「不明確な目標設定」「成果主義・競争風土」)に対してマイナスの影響を与えている(不正発生のリスクを下げる)。
  • 対策としては目標管理の適正化やキャリア形成の整備によって、組織全体の不正風土の改善を図ること。また、一方通行的な説明だけでなく、議論やワークショップ、サーベイなど、従業員側の「意見の吸い上げ」を重視したコンプライアンス対策が重要である。

 以上、調査結果のレポートから、ポイントを抜粋して見てきました。上記内容からもわかるように、今回の大規模調査では、組織の不正と人事労務施策との関係性が明確に可視化されています。

 ここで触れた内容以外にも、興味深いデータが多数含まれており、人事労務関係者にとっては、大いに注目すべき資料であると言えます。調査結果からの提言も行われているので、不正対策に限定せず、人事制度や労務管理の見直しの視点からも一読されることをおすすめします。


参考リンク
パーソル総合研究所「企業の不正・不祥事に関する定量調査」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/corporate-misconduct.html  

(菊地利永子)