注目の仕事と育児・介護の両立支援に関する報告書公表

 2023年6月1日の記事「仕事と育児・介護の両立の制度変更において注目すべき報告書(案)が公開に」では、厚生労働省の「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」の報告書案を取り上げましたが、昨日、正式に「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」が公表されました

 今回の報告書で特徴的なことは、今後の両立支援制度の検討に当たっての基本的な考え方について、「育児や介護と仕事の両立」から、「ライフステージにかかわらず全ての労働者が「残業のない働き方」となっていることをあるべき方向性として目指す」となり、これを実現するための様々な施策に取り組んでいくことです。

 企業が制度として注目することとなる「子の年齢に応じた両立支援に対するニーズへの対応」については、以下のような子どもの具体的な年齢について踏み込んでいます。

(1)子が3歳になるまでの両立支援の拡充
①テレワークの活用促進
・テレワークを、事業主の努力義務とすることが必要。
(就業時間中は保育サービス等を利用して業務に集中できる環境が整備されていることが必要。)
②短時間勤務制度の見直し
・柔軟な勤務時間の設定に対するニーズに対応するため、所定労働時間を1日6時間とする以外の他の勤務時間も併せて設定することを一層促していくことが必要。
・短時間勤務が困難な場合の代替措置の一つに、テレワークも追加することが必要。

(2)子が3歳以降小学校就学前までの両立支援の拡充
①柔軟な働き方を実現するための措置
・短時間勤務制度
・テレワーク
・始業時刻の変更等(フレックスタイム制を含む)
・新たな休暇の付与
これらの中から、事業主が各職場の事情に応じて、2以上の制度を選択して措置を講じる義務を設けることが必要

②残業免除(所定外労働の制限)を3歳以降小学校就学前まで請求を可能とすることが必要

(3)子の看護休暇制度の見直し
【取得目的】
育児目的休暇や、コロナ禍で小学校等の一斉休校に伴い、多くの保護者が休暇を取得せざるを得なかったことを踏まえ、子の行事(入園式、卒園式など)参加や、感染症に伴う学級閉鎖等にも活用できるようにすることが必要
【取得可能な年齢】
診療を受けた日数等を勘案し、小学校3年生の修了までに引き上げることが必要。
【勤続6か月未満の労働者】
労働移動に中立的な制度とするため、勤続6ヶ月未満の労働者を労使協定によって除外できる仕組みは廃止することが必要。

 他にも、育児休業取得状況の公表や取得率の目標設定や次世代育成支援対策推進法の期限の延長にも踏み込んでおり、企業として対応すべき点は多くなりそうです。

 今後、この報告書が踏まえられて、厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会で、引き続き検討が行われます。今後の動向にも注目することが必要です。


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2023年6月1日
仕事と育児・介護の両立の制度変更において注目すべき報告書(案)が公開に
https://roumu.com/archives/117449.html
参考リンク
厚生労働省「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書を公表しま」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33678.html
(宮武貴美)