永年勤続表彰金は社会保険における報酬等に該当するか

 社会保険では、会社が従業員に労働の対償として支払うものは、報酬や賞与として社会保険料の対象となるとしています。今回、長期で勤続した従業員に対して、表彰金等を支払う場合の、報酬等に該当するか否か、その取扱いが以下の通りQ&Aの形で明確化されました


【問】事業主が長期勤続者に対して支給する金銭、金券又は記念品等(以下「永年勤続表彰金」という。)は、「報酬等」に含まれるか。

【答】永年勤続表彰金については、企業により様々な形態で支給されるため、その取扱いについては、名称等で判断するのではなく、その内容に基づき判断を行う必要があるが、少なくとも以下の要件を全て満たすような支給形態であれば、恩恵的に支給されるものとして、原則として「報酬等」に該当しない
 ただし、当該要件を一つでも満たさないことをもって、直ちに「報酬等」と判断するのではなく、事業所に対し、当該永年勤続表彰金の性質について十分確認した上で、総合的に判断すること

≪永年勤続表彰金における判断要件≫
① 表彰の目的
 企業の福利厚生施策又は長期勤続の奨励策として実施するもの。なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される。
② 表彰の基準
 勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの。
③ 支給の形態
 社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。


 労働力人口の不足が深刻化する中、長期の勤続を功労として称賛し、また、促進したいと考える企業は多くあるかと思います。制度の設計をするときには、このような社会保険の面にも視点を当てておく必要があるのでしょう。

 今回、このような整理は2023年6月27日に従来からある「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」に追記されることによって明確にされています。日本年金機構の内部では報酬等に該当するというものと該当しないとする資料(疑義照会)があったことから、統一の見解が広く周知されたことで実務上の取扱いが明確になりました。

 なお、労働保険は「年功慰労金」、「勤続褒賞金」は賃金としないものとして示されており、所得税は、参考リンクにある国税庁のホームページで示されているため、あわせて確認することをお勧めします。


参考リンク
法令等データベース「「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の一部改正について(令和5年6月27日事務連絡)」
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T230629T0010.pdf
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集 」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.files/jireisyu.pdf
厚生労働省「労働保険対象賃金の範囲」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudouhoken01/dl/1-3-2.pdf
国税庁「No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2591.htm

(宮武貴美)