今年から集計方法が変更になった不払残業の是正結果

 先日、厚生労働省から2022年の監督指導による賃金不払残業の是正結果が公表されました。今回の集計から、集計内容が以下のように変更になっています。

  • 集計期間 「年度」から「年」に変更
  • 集計事業場の単位 「企業数」から「事業場数」に変更
  • 集計対象となる賃金 「割増賃金のみ」から「定期賃金(退職金を含む)割増賃金、休業手当」に変更
  • 集計対象となる事案 「1事案当たり100万円以上支払ったもののみ」から「1事案当たり1円以上支払ったもの」に変更

 そのため、今回から2022年1月から2022年12月までに、不払となっていた定期賃金(退職金を含む)割増賃金、休業手当が支払われたものが取りまとめられています。詳細は、以下のとおりです。

■令和4年に全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額

  1. 件数 20,531 件
  2. 対象労働者数 179,643人
  3. 金額121.2億円(1事案における最大支払金額 2.7億円)

■上記のうち、令和4年中に、労働基準監督署の指導により使用者が賃金を支払い、解決されたものの状況

  1. 件数 19,708 件(96.0%)
  2. 対象労働者数 175,893 人(98.0%)
  3. 金額79億4,597万円(65.5%)

また、監督指導による是正事例として、以下のような内容が示されています。

【事案の概要(業種:金融業)】

  • 「残業代が適切に支払われていない」との情報を基に、労基署が監督指導を実施。
  • 労働時間は、出勤簿に始業終業時刻を記入し、残業時間は残業申請書により把握していた。
  • 出勤簿に記録されている始業時刻前や終業時刻後に、パソコンの使用記録があり、労働者から聴取したところ、労働時間記録とパソコンの使用記録との乖離が認められたため、労働時間の過少申告の原因究明や不払となっている割増賃金を支払うよう指導。

【企業が実施した解消策】

  • パソコンの使用記録や労働者からのヒアリングなどを基に、労働時間記録とパソコンの使用記録との乖離の原因や割増賃金の不払の有無について調査を行い、不払となっていた割増賃金を支払った。
  • 賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
    ①出勤簿を廃止し、勤怠管理システムを導入し適正に始業・終業時刻を記録することにより、適切に割増賃金を支払うこととした。
    ②業務で使用するパソコンについて、終業時刻から一定時間経過後には、強制的にシャットダウンされるシステムを導入した。
    ③労働者全員に対し労働時間管理の重要性を周知するとともに、管理者に対しては適正な労働時間把握を行うことの必要性についての意識改革を指示した。

 近年はタイムカードによる労働時間の把握のみならず、パソコンの使用記録との乖離も労働基準監督署の指導監督での確認されることが多く、企業としても従業員の労働実態を正確に捉えることが必要になってきています。


参考リンク
厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和4年)を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34397.html

(福間みゆき)