人材育成・能力開発の見直しにより期待できる生産性の向上

 企業を取り巻く環境の変化が激しくなっており、従業員に求められる能力の多様化・変化が大きくなっています。そのため、企業としては新たな環境に適応するためのリスキリングの実施が重要になっています。人財育成や能力開発は企業にどのような好影響を与えるのか。今回は、リクルートの「企業の人材マネジメントに関する調査2023 人材育成・能力開発(人への投資/リスキリング)編」の結果を見てみることにしましょう。

 これによれば、企業の51.1%が「人材育成・能力開発」について制度を変えたり、従来のやり方を見直す必要性を感じていると回答しており、その理由の上位は以下のようになっています。

  1. 仕事を遂行するために必要なスキルが多様になってきているため
  2. 従来のスキルでは、仕事の場面で価値を出しことが難しくなっているため
  3. 能力開発の機会を提供することが、従業員の定着率向上につながるため
  4. 管理職によるOJTでの人材育成では限界があるため

 このように多くの企業が人材育成・能力開発の見直しが必要と考えていますが、実際にその見直しが企業の生産性を向上させるという結果が出ています。以下は、能力開発費が 3 年前と比べて増加した企業のうち、人材育成・能力開発の見直しができている企業とできていない企業における生産性の変化に関する比較です。
■人材育成・能力開発のやり方の見直しができている企業
 3年前と比較して、労働生産性が低下した 7.9%
 3年前と比較して、労働生産性がほぼ横ばいである 24.9%
 3年前と比較して、労働生産性が向上した 67.2%
■人材育成・能力開発のやり方の見直しができていない企業
 3年前と比較して、労働生産性が低下した 19.6%
 3年前と比較して、労働生産性がほぼ横ばいである 37.0%
 3年前と比較して、労働生産性が向上した 43.5%

 このように人材育成・能力開発のやり方の見直しができている企業では67.2%で生産性が向上していると回答しており、それは見直しができていない企業よりも大幅に高い結果となっています。またこの調査では、この見直しは離職率にも影響しているという結果が出ています。

 骨太の方針2023においてもリスキリングの重要性が述べられていますが、企業の生産性向上という観点でも、新たな環境で求められる能力開発が重要であることが分かります。


参考リンク
リクルート「企業の人材マネジメントに関する調査2023 人材育成・能力開発(人への投資/リスキリング)編(2023/7/26)」
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2023/0726_12509.html

(大津章敬)