異次元の少子化対策を受けた育児介護休業法改正の方向性
政府が推進しようとしている異次元の少子化対策を受け、来年の通常国会では育児介護休業法等の改正が行われる見込みとなっていますが、その前提となる情報が出始めています。
そこで今回は、2023年9月15日に開催された第60回労働政策審議会雇用環境・均等分科会の中の資料「仕事と育児・介護の両立支援制度等の見直しについて」から法改正のポイントとなる事項について見ていきましょう。
(1) 子が3歳になるまでの両立支援の拡充
- テレワークを事業主の努力義務に追加することについての是非。
- 柔軟な勤務時間の設定に対するニーズとして、原則1日6時間とする措置以外に、他の勤務時間も併せて設定することを一層促すことについての是非。
- 短時間勤務制度を講ずることが困難な場合の代替措置(育児休業制度に準ずる措置、始業時刻の変更等の措置)に、テレワークを追加することについての是非。
(2) 子が3歳以降小学校就学前までの両立支援の拡充
- 短時間勤務や、柔軟な働き方を活用しながらフルタイムで働くことのニーズに対応する観点から、事業主が各職場の事情に応じて、2以上の制度を選択して措置を講じる義務を設けることの是非。
- 事業主が選択する措置を以下とすることについての是非。
a) 始業時刻等の変更
b) テレワーク(所定労働時間を短縮しないもの)
c) 短時間勤務制度(育児のための所定労働時間の短縮措置)
d) 保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与(ベビーシッターの手配及び費用負担等)
e) 新たな休暇の付与(労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための休暇) - 3歳になるまでの子を育てる労働者と同様、3歳以降の子を育てる労働者の権利として残業免除を請求できることとすることについての是非。仮に引き上げる場合、子の対象年齢を小学校就学前までとすることについての是非。
(3)子の看護休暇制度の見直し
- 取得事由の見直しの範囲について、子の行事参加や学級閉鎖等を対象とすることについての是非。
- 子の対象年齢を引き上げの是非。仮に引き上げる場合、子の対象年齢を小学校3年生までとすることについての是非。
- 子の病気のために利用した各種休暇制度の取得日数の状況等に鑑み、取得可能日数を引き続き1年間に5日(子が2人以上の場合は10 日)とすることについての是非。
- 子の看護等のニーズは、勤続期間にかかわらず存在することから、労働移動に中立的な制度とする等の観点からも、継続して雇用された期間が6か月未満の労働者を労使協定によって対象から除外する仕組みを廃止することについての是非。
(4)仕事と育児の両立支援制度の活用促進
- 制度の活用をサポートする企業や周囲の労働者に対する支援として、育児休業や柔軟な働き方を支える体制整備を行う中小企業に対する助成措置についての是非。
- 男性の育児休業の更なる取得促進のため、常時雇用する労働者数1,000 人超の事業主に対して義務付けられている男性の育児休業等取得率の公表義務の対象を、300人超の事業主に拡大することについての是非。仮に拡大する場合、拡大された企業の規模を考慮した公表の仕方として、2年に1度の頻度にすることや社内の状況について説明できる仕組みを設けるなどの配慮をすることの是非。
その他、介護に関する内容なども含まれるなど、かなり広範に亘る内容となっています。両立支援の仕組みが充実することはよいと思いますが、制度の複雑さが増しており、企業・労働者の双方の制度理解が及ばないという事態になることも懸念されます。
参考リンク
厚生労働省「第60回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35285.html
(大津章敬)