新人・若手は上司・育成担当者と比較し「仕事のやりがい・意義」よりも「プライベートの充実化」を重視傾向

 2023年11月6日記事「新卒3年以内離職率、大卒・高卒就職者ともに前年比増」で取り上げた通り、「新規大学卒就職者の3割が離職」という傾向は今年の調査でも変わらず、従業員の「早期離職」は、企業規模や業界を問わず抱える問題となっています。ただし、割合の数字自体には大きな変化が見られない一方で、離職理由や新人・若手社員の価値観には、少しずつ時代によって変化が見られるようです。

 今月、リクルートマネジメントソリューションズ社が「新人・若手の早期離職に関する実態調査」の結果を公表しました。これは、新人・若手における主な離職要因や現職に留まる理由、また新人・若手に対してどのような関わりが効果的を調査することを目的として2023年3月にインターネットを通じて実施され、入社1~3年目(大学・大学院卒のみ)の正社員・正職員として勤務する435名、直近3年以内に新入社員(正社員)の育成担当者および上司915名から回答を得たものです。
 今回はその調査の中から、離職の理由と、昨今の新人・若手に見られる価値観の特徴、離職に有効と考えられる企業側の対応について見ていきたいと思います。

(1)入社3年目以下社員の主な退職理由
 過去3年以内に、自己都合で退職をしたことがある割合は、17.5%で、退職の理由としては、労働時間や休日の取りやすさなどを示す「労働環境・条件」が悪いという理由が上位でした。
 また、過半数以上がこれまでに会社を辞めたいと思ったことがあると回答。理由は、「仕事にやりがい・意義を感じない」、「自分のやりたい仕事ができない」の現業務に関する選択肢が上位を占めています。 
(2)仕事とプライベートの理想の割合(上司・育成担当者との比較)
 「仕事0:プライベート10」を選択した割合は新人・若手が5.7%、上司・育成担当者が2.7%、「仕事3:プライベート7」を選択した割合は新人・若手が28.5%、上司・育成担当者が20.2%で、新人・若手の方が相対的に見るとプライベートを重視する傾向がありました。
(3)新人・若手が仕事で労力をかけても得たいもの

 仕事で労力をかけて得たいものとしては、1位が「プライベートの時間が確保できる、さらに充実させる」 (24.4%)、次いで「高い収入を得る」(23.0%)、「自分のやりたいことができる」(16.8%)が上位でした。
 一方、「社内で評価される、地位・役職が上がる」(8.0%)、「やる意味や意義を感じられることに取り組む」(7.8%)「相互に学びあう、成長しあえる仲間を持つ」(4.4%)といった項目は下位に沈んでいます。

 

 離職理由は「やりがい・意義」の選択率が最も高かった一方で、仕事の中で労力をかけて得たいものの問いでは、「やりがい・意義」の選択率よりも「プライベートへの充実」の選択率の方が高い結果となりました。
 双方の回答が一見矛盾するようにも見えますが、この結果について、同レポートは「若手世代が、職場以外にもコミュニティの選択肢を多数持っているため(副業やSNSの繋がりなど)、職場に対して求めること自体が相対的に下がっていることが背景にあると考えている。仕事以外でも居場所は存在し、そこで楽しみや成長実感を味わえている可能性が高い。」と分析しています。

 ここで注目したいのが、レポート内でも指摘されているように、「新人・若手がプライベートを大切にしていたとしても、それが即ち仕事にやる気がないというわけでない」ということです。
 今後の離職対策における重要なポイントは、新人・若手社員がこのような新しい価値観を持つ傾向があるということを、上司・育成担当者が認識したうえでのマネジメントを行っていくことになるでしょう。 


参考リンク
リクルートマネジメントソリューションズ「「新人・若手の早期離職に関する実態調査」の結果を発表 2023/11/8」
https://www.recruit-ms.co.jp/press/pressrelease/detail/0000000417/

(菊地利永子)