年収の壁の対応策(130万円の壁)ってなんですか?
服部印刷の福島さんから連絡があり、大熊は服部印刷に向かった。
大熊社労士
いつもお世話になっています、大熊です。
服部社長
大熊さん、いつもありがとうございます。今日は福島さんから相談があるということでしたよね。私も同席させてもらいますね。
福島さん
社長ありがとうございます。早速ですが、パートさんのおひとりに「今年年収が130万円を超えてしまったと思うので、証明書を発行して欲しい」と言われました。これまで130万円を超えたという理由で証明書を発行したことがなくて、何の証明をすればよいのか全くわからないのですが・・・。
大熊社労士
なるほど、私の想像ですが、年収の壁への対応に関することかもしれません。ご承知の通り、社会保険の扶養であるためには、一般的には年収が130万円未満であることが求められますよね。
福島さん
はい、当社の従業員の奥様やお子さんを扶養に入れたいというときは確認しています。あ、高齢のご両親を扶養に入れるときは180万円未満ですね。
大熊社労士
そうですね。扶養になる人が60歳以上であったり、一定の障害者であったりするときには180万円になりますね。これらの130万円/180万円のことを一般的には「130万円の年収の壁」などと呼んだりします。
服部社長
年収が130万円以上になると、自分で社会保険料を払わないといけないってやつですね。
大熊社労士
そうですそうです。ですので、年収130万円未満になるように、労働時間を調整する・・・就業調整をするパートさんが出てくることになります。
福島さん
大熊先生、そうなると、今回、証明書を発行してほしいというパートさんは扶養から外れないといけないのではないですか?
大熊社労士
そこが今回のポイントになります。本当は年収が130万円以上になると見込まれると、その時点から社会保険の扶養を外れることになりますが、今は人手不足もあるので、130万円の壁を意識して多くの人が就業調整をしてしまうと、会社が回らなくなってしまう可能性もあります。
服部社長
特にこの10月は最低賃金が大幅に引き上げになったから、130万円未満に抑えようと、労働時間を抑制する人が多くいそうですね。
大熊社労士
そうなのです。そこで、年収の壁対応策として、繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となる仕組みを政府が作ったのです。
福島さん
ということは、パートさんはその証明をしてほしいと申し出てきているということですね。
大熊社労士
おそらくそうではないかと推測しています。
服部社長
なるほど。確かに今年の秋口から冬にかけては、受注も好調だったので、パートさんにも残業してもらったなぁ。それに同一労働同一賃金の関係でパートさんにも賞与を払うことになったから、それも年収を押し上げる結果となっている。
福島さん
そうですね。大熊先生、その証明とはどのようなものなのですか。
大熊社労士
はい。すでにこちらのように書式が公開されています。こちらの「【被扶養者を雇う事業主の記載欄】」に記載いただいて、パートさんに渡していただくことになります。
服部社長
なるほど、早速、こちらの証明を出してあげることにしよう。
福島さん
そうですね。一度、このような証明でよいかを、パートさんにも確認してみますね。大熊先生ありがとうございました。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
これは、「事業主の証明による被扶養者認定」と呼ばれているものであり、被扶養者となっている保険者に対し、家族および家族を雇用している会社を通じ提出することになります。提出するタイミングは主に、被扶養者の要件を満たしているかを確認する被扶養者の資格確認時になります。保険者によって確認するタイミングが異なりますので、随時発行することになるかもしれません。
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2023年10月23日「被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書」
https://roumu.com/archives/119428.html
参考リンク
厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html
(宮武貴美)