育児・介護休業法改正に向けて報告された仕事と育児・介護の両立支援対策充実に係る建議

 来年の通常国会には、仕事と育児・介護の両立をさらに進めるための方策とし、育児・介護休業法の改正が見込まれていますが、昨日、厚生労働省の労働政策審議会で「仕事と育児・介護の両立支援対策の充実について」がまとまり、建議されました。その概要は以下の通りです。

1.子の年齢に応じた両立支援に対するニーズへの対応
(1)子が3歳になるまでの両立支援の拡充
○テレワークを活用促進するため、事業主の努力義務とする。
○短時間勤務制度について、1日6時間を必置とした上で、他の勤務時間も併せて設定することを促進するとともに、短時間勤務制度を講ずることが困難な場合の代替措置にテレワークを追加する。
(2)子が3歳以降小学校就学前までの両立支援の拡充
○各職場の事情に応じて、事業主が柔軟な働き方を実現するための措置の選択肢(※)から労働者が選択可能なものを2以上選択して措置を講じる義務を設け、労働者はその中から1つ選べることとする
(※)始業時刻等の変更、テレワーク等、短時間勤務制度、保育施設の設置運営等、新たな休暇の付与
○労働者は権利として子が小学校就学前まで所定外労働の制限(残業免除)を請求できることとする。
(3)子の看護休暇制度の見直し
○感染症に伴う学級閉鎖等や子の行事参加(子の入園式、卒園式及び入学式を対象)にも利用できるようにし、請求できる期間は、小学校3年生修了時までとする。
(4)育児期の両立支援のための定期的な面談
(5)心身の健康への配慮

2.仕事と育児の両立支援制度の活用促進
(1)制度の活用をサポートする企業や周囲の労働者に対する支援
(2)育児休業取得状況の公表
男性の育児休業取得率の公表義務の対象を、常時雇用労働者数1,000人超の事業主から300人超の事業主に拡大する。

3.次世代育成支援に向けた職場環境の整備
次世代育成支援対策推進法を令和17年3月末まで延長する。
○企業の取組促進のため、一般事業主行動計画について、男性の育児休業取得率や時間外労働に関するPDCAサイクルの確立や数値目標の設定を義務付ける。
○「男女とも仕事と子育てを両立できる職場」を目指す観点から、一般事業主行動計画策定指針を見直す。
○「くるみん」などの認定基準を見直す。

4.介護離職を防止するための仕事と介護の両立支援制度の周知の強化等
○事業主に以下の措置を講ずることを義務付ける。
介護に直面した労働者が申出をした場合に、両立支援制度等に関する情報の個別周知・意向確認
・介護に直面するよりも早期(40歳等)の情報提供
研修や相談窓口の設置等の雇用環境の整備
○介護期の働き方について、テレワークを事業主の努力義務とする。

5.個別のニーズに配慮した両立支援
○子に障害がある場合等の要介護状態の判断基準について今後さらに検討する。
○事業主に、妊娠・出産の申出時や子が3歳になるまでの適切な時期の面談等の際に、労働者の仕事と育児の両立に係る個別の意向の聴取とその意向への配慮を義務付ける

6.仕事と育児・介護との両立支援に当たって必要な環境整備(プライバシーへの配慮等)

 育児・介護休業法が改正・施行されるのであれば、制度の整備や運用の方法の検討が必須となります。今後の動向も注目していく必要があります。


参考リンク
厚生労働省「労働政策審議会建議「仕事と育児・介護の両立支援対策の充実について」を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000073981_00011.html
(宮武貴美)