規制改革推進に関する中間答申(案)で示された副業兼業時の労働時間通算管理の見直し方針

 働き方改革の中で、副業・兼業の解禁は大きなインパクトを与えました。しかし、特に雇用型の副業・兼業が一般化したかと言えば、決してそのような状態にはなっていません。その要因の中でも大きいのが、いわゆる労働時間通算の問題です。
 
 内閣府の規制改革推進会議では、これが議論の対象となり、昨年12月26日に公表された規制改革推進に関する中間答申(案)では、「副業・兼業における割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の在り方の検討」という項目が設けられました。
 
 その内容は以下の通りとなっていますが、今後進められる働き方改革関連法施行5年後見直し規定に基づく労働基準法改正等の検討の中で議論が進められていくことになると思われます。


副業・兼業における割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の在り方の検討
【a :令和5年度検討開始、令和6年度結論 、b:令和6年度措置】

 副業・兼業は、労働者にとって、主体的なキャリア形成につながる意義があり、併せて、送り出し企業にとっては社内では得られないスキルの獲得、受入企業にとっては人材確保の選択肢の拡大といったメリットがあるほか、社会全体においても、物流や交通、医療、介護といった多くの分野での人材不足問題への貢献や、高生産性産業への労働移動を通じた良質な雇用確保・生産性の向上が期待される。一方で、副業をしていない正社員のうち、副業の意向がある者は 40 %以上存在しているものの、現実に副業をしている者は7%に とどまっているという民間企業の調査結果など、副業の意向のある労働者は非常に多いものの、副業をしている労働者数は増えていないという現状を踏まえ、次の措置を講ずる。
a 厚生労働省は、 ①副業・兼業を行う労働者の健康管理のため、その所属する送り出し企業又は受入企業の双方における労働時間の通算管理が必要である一方、割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理については、制度が複雑で企業側に重い負担となるために雇用型の副業・兼業の認可や受入れが難しいとの指摘があること、 ②米国、フランス、ドイツ、イギリスでは割増賃金の支払において労働時間の通算管理を行っ ていないことに鑑み、令和5年度中に設置予定の働き方改革関連法の見直しに係る検討会において、割増賃金の支払に係る労働時間の通算管理の在り方について、労働基準法等の関係法令における行政解釈の変更も含めて検討し、結論を得る。
b 厚生労働省は、 a の検討を始めとした副業・兼業の円滑化に向けた施策立案に資するよう、以下の事項等について実態を把握し、結果を公表する。

  1. 企業が自社の労働者に副業・兼業を認める際及び副業・兼業を行う人材を受け入れる際の実態について、認める又は受け入れる副業・兼業の実施形態(雇用型、業務委託型 等)や、相手企業の形態(グループ内・外企業等)、そのような形態にしている理由。また、実施形態ごとの副業・兼業者数
  2. 管理モデル導入企業を始めとした副業・兼業の送り出し企業及び受入企業における労働者の割増賃金の支払方法や課題

参考リンク
内閣府「第18回規制改革推進会議 第61回国家戦略特区諮問会議 合同会議(2023/12/26)」
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/231226/agenda.html
内閣府「第3回 働き方・人への投資ワーキング・グループ 議事次第(2023/12/5)」
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_03human/231205/human03_agenda.html

(大津章敬)