不妊治療の支援を「制度化して行っている」企業は10.6%

 〇〇と仕事の両立と言えば、育児や介護、そして病気治療などが先行していますが、近年は不妊治療と仕事との両立支援にも注目が集まっています。不妊治療を受けている、受けたことがある夫婦は4.4組に1組、不妊治療(生殖補助医療等)により誕生する子どもは11.6人に1人という状況になっていることから、厚生労働省では不妊治療と仕事の両立に係る諸問題を探るべく調査を行っています。
(1)不妊治療を行っている従業員の把握状況
 不妊治療を行っている従業員を把握している企業(「いる」、「いない」、「過去にいたが退職した」の合計)は37.7%に止まっており、62.3%が分からないと回答しています。
(2)不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度等の実施状況
 不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度を「制度化して行っている」企業は10.6%に止まっています。73.5%が「行っていない」と回答しており、状況の把握だけでなく、支援制度もあまり整っていないことが分かります。
(3)不妊治療のための制度
 不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度の運用や取組を行っている企業で導入されている制度は、「不妊治療に利用可能な休暇制度」がもっとも多く47.8%となっています。次いで「不妊治療に利用可能な勤務時間や場所等の柔軟性を高める制度(テレワークを含む)」19.4%となっています。

 このように企業としては、従業員の不妊治療の状況や要望を把握していないため、制度の構築も進んでいないという結果となっていますが、従業員調査の結果を見ると、14.5%が不妊治療の経験があると回答しており、実際には一定数の従業員が不妊治療と仕事の両立を行っている(もしくは行おうとしていた)ことが分かります。現実には仕事との両立ができず、仕事を辞めたり、不妊治療をやめたという回答も多くなっています。
 
 女性活躍の促進、そして晩婚化などの環境変化により、今後、このテーマの重要性はますます高まっていくと予想されます。まずはこのテーマのポイントを把握する意味からも今回の調査結果を確認されることをお勧めします。


参考リンク
厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査結果(2024/3/29)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39168.html

(大津章敬)