定昇込みで5%以上の賃上げの企業の割合、大企業で53.8% 中堅・中小企業で24.4%

 今春の賃上げに関して、財務省から「地域企業における賃上げ等の動向について(特別調査)」という調査結果が公表されました。本日はこの内容を取り上げます。なお、( )内は前年度の結果となっています。
(1)賃上げの動向
[全規模・全産業]
ベアを行った 70.7%(64.4%)
定期昇給を行った 81.9%(79.4%)
賞与・一時金・手当等の増額を行った 34.3%(43%)
その他 5.6%(5.1%)
賃金引上げを行わなかった 2%(3.3%)
[大企業]
ベアを行った 81.1%(77.9%)
定期昇給を行った 86.2%(86.4%)
賞与・一時金・手当等の増額を行った 36.2%(43.3%)
その他 8.5%(6.8%)
賃金引上げを行わなかった 1.0%(1.5%)
[中堅・中小企業]
ベアを行った 63.1%(54.3%)
定期昇給を行った 78.7%(74.2%)
賞与・一時金・手当等の増額を行った 33%(42.8%)
その他 3.4%(3.8%)
賃金引上げを行わなかった 2.7%(4.6%)

(2)ベア引上げ率の動向
[大企業]
5.0%以上 22.7%(6.1%)
4.0~5.0%未満 17.2%(12.2%)
3.0~4.0%未満 28.6%(21.2%)
2.0~3.0%未満 18.2%(28.2%)
1.0~2.0%未満 10.3%(20.4%)
1.0%未満 3.4%(11.8%)
[中堅・中小企業]
5.0%以上 17.2%(11.4%)
4.0~5.0%未満 13.7%(5.1%)
3.0~4.0%未満 21.1%(16.9%)
2.0~3.0%未満 22.5%(27.1%)
1.0~2.0%未満 19.8%(25.1%)
1.0%未満 5.7%(14.5%)

(3)ベアと定期昇給を合わせた賃金の引上げ率の動向
[大企業]
5.0%以上 53.8%(26.1%)
4.0~5.0%未満 14.9%(24.6%)
3.0~4.0%未満 17.8%(17.8%)
2.0~3.0%未満 8.0%(20.1%)
1.0~2.0%未満 2.9%(9.7%)
1.0%未満 2.9%(1.7%)
[中堅・中小企業]
5.0%以上 24.4%(13.4%)
4.0~5.0%未満 15.3%(12.1%)
3.0~4.0%未満 20.1%(21.0%)
2.0~3.0%未満 22.1%(26.8%)
1.0~2.0%未満 15.5%(21.4%)
1.0%未満 2.5%(5.4%)

 このように全体として前年度と比較し、ベースアップなどの賃上げを行った企業が増加しており、その水準も上昇していることが分かります。一方で、賃金引上げ率に関しては、ベアと定期昇給を合わせた賃金で見た場合、大企業の53.8%が5%以上の引き上げを行っているのに対し、中堅・中小企業では、その割合は24.4%に止まっています。収益性や価格転嫁の状況などの差から、大企業と中小企業の間で大きな格差が生まれていることは確実です。
 
 転職による賃金増加に対する労働者の関心が高まる中、中小企業の人材が中堅、更には大企業に移ることで、中小企業の人材不足が深刻化することが懸念されます。


参考リンク
財務省「地域企業における賃上げ等の動向について(特別調査)2024/4/22)」
https://www.mof.go.jp/about_mof/zaimu/kannai/202401/tokubetsu.pdf

(大津章敬)