今春の賃上げ実施率は84.2%で、賃上げ率は「5%以上6%未満」が最多

 2024年度は物価上昇と採用難に伴う賃金水準の情報に対応するため、多くの企業で賃上げが実施されました。本日は、東京商工リサーチの「2024年度「賃上げに関するアンケート」調査の結果からその振り返りをしてみましょう。
(1)賃上げ実施率は84.2%(6,899社中、5,810社)

  • 前年度の84.8%から0.6ポイント下落したものの、3年連続の8割台。
  • 規模別の「実施率」は、大企業が94.0%(794社中、747社)で前年度(89.9%)から4.1ポイント上昇した一方、中小企業は82.9%(6,105社中、5,063社)で、前年度(84.2%)を1.3ポイント下回っています。ここからは中小企業の賃上げ余力が減少してきている実情が見えていると言うことができるかも知れません。

(2)賃上げ実施企業の61.46%がベースアップを実施
74.28% 定期昇給
61.46% ベースアップ
38.57% 賞与の増額
25.07% 新卒者の初任給の増額
12.52% 再雇用者の賃金の増額

 賃上げの内容については「新卒者の初任給の増額」において、大企業は45.63%の実施率に対し、中小企業は22.10%に止まっています。また「再雇用者の賃金の増額」についても大企業の実施率は21.40%であるのに対し、中小企業は11.24%となっており、企業規模によって対応に差異があることが分かります。

(3)賃上げ率は5%以上6%未満が26.8%と最多
0.98% 1%未満
4.90% 1%~2%未満
13.12% 2%~3%未満
25.66% 3%~4%未満
12.65% 4%~5%未満
26.82% 5%~6%未満
4.55% 6%~7%未満
3.13% 7%~8%未満
2.26% 8%~9%未満
0.49% 9%~10%未満
4.67% 10%~20%未満
0.40% 20%~30%未満
0.29% 30%以上

 5%~6%未満という回答が大企業で32.04%、中小企業でも26.21%といずれも最多となっていますが、中小企業では10%~20%未満が4.93%もあり、今春、思い切ったベースアップを行った例も一部で見られるようです。

 10月の最低賃金引上げも過去最高水準となることが確実な状勢となり、来春の賃上げも今春同様、大きなものになる可能性が高くなっています。中小企業ではその原資がないというケースも多く、今後、賃金の二極化が進み、賃上げに対応できない中小企業の廃業なども増加することになるのでしょう。


参考リンク
東京商工リサーチ「2024年度「賃上げに関するアンケート」調査(2024/8/20)」
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198855_1527.html

(大津章敬)