若手層ほど出張に否定的-出張によって得られる副次的効果も明らかに
コロナ禍で広まったオンライン会議の影響で、多くの企業にて減少した国内出張ですが、直近では新幹線で移動するビジネス客の数も回復してきている様子が見て取れます。産労総研の調査でも、今後の出張の機会・回数を「増やす」と回答している企業も一定数見られますが、今後、企業における出張のありかたは、どのように変わっていくのでしょうか。
先日、パーソル総合研究所は「出張に関する定量調査」の結果を公表しました。この調査は、雇用組織と従業員にとって有意義な出張の在り方を探ること等を目的とし、直近3カ月以内に国内出張を経験した正社員20~64歳を対象に、インターネット調査にて行われたものです。調査時期は2024年4月3日-4月5日 (追加調査:同年7月23日-7月25日)で、回答数は1,834件となっています。
今回の調査結果からいくつかピックアップしてみていきましょう。
(1)出張前後の肯定意識の落差(年代別)
直近の出張を「出張でないと遂行できない業務」であると捉えた割合
20代 :出張前 68.5% → 出張後 40.3%(▲28.2pt)
30代 :出張前 75.2% → 出張後 46.9%(▲28.3pt)
40代 :出張前 75.9% → 出張後 49.1%(▲26.8pt)
50代 :出張前 79.7% → 出張後 60.5%(▲19.2pt)
60代前半:出張前 83.7% → 出張後 63.4%(▲20.3pt)
※出張前・後いずれのタイミングでも出張を肯定的に捉える割合は若年層で低く、出張前後の肯定意識の落差も、若年層で大きい傾向に。
(2)出張に行きたいと思わない理由
1位:長距離の移動が面倒くさい … 21.4%
2位:移動時間が無駄だと思う … 15.8%
3位:経費以外の余計な支出が増える … 14.5%
※「同行者がいると気疲れする」「慣れない場所でのストレスは避けたい」などの理由は、若年ほど高い傾向に。
(3)出張移動中の過ごし方
【行き】
1位:特に何もしていない(寝ていた) … 39.9%
2位:スマホやノートPCで仕事をしていた … 22.7%
3位:外の景色を眺めていた … 17.9%
【帰り】
1位:特に何もしていない(寝ていた) … 28.1%
2位:スマホやノートPCで娯楽を楽しんでいた … 17.3%
3位:スマホやノートPCで仕事をしていた … 15.4%
(4)出張の効用、メリット
一方、今回の調査では、出張の直接的な効用と副次的な効用が示されました。出張の肯定意識への影響要因分析により抽出された、組織・個人双方にとって重要な3つの効用(有意義な出張を行う上で重要なメリット)として、以下3点が挙げられています。
・新たな気づき … 新しいアイデアや考え方が生まれる等
・前向きな態度変容 … 新しいアイデアや考え方が生まれる等
・偶発的なビジネス拡大 … 出張業務以外の新しい仕事が得られる等
これらの効用については、行きの移動中に「自己研鑽」を行っている人ほど「新たな気づき(新しい)アイデアや考えが生まれる/仕事における学びがある)」機能のスコアが高い傾向にあったということです。また、出張時の業務時間外の過ごし方別においては、いずれの効用・メリットも、業務時間外は特に何も行っていない「巣籠り」群でもっとも低くなっている一方で、出張業務の関係者との懇親や近郊の観光名所を訪れる「懇親&娯楽」群でもっとも高い傾向にあった、ということも明らかになりました。
今回の調査の結果を見る限り、出張の意義や機能の見直しを継続して行い、オンライン等で代替可能と判断されるものについては、置き換えていくことで生産性を上げながら、一方で、個人とチーム双方にとって有益となる機能を持ち得る出張については、意図的に機会を創出する価値がありそうです。
参考リンクには、今回ご紹介した パーソル総合研究所「出張に関する定量調査」のほか、企業における出張に関する各種調査を掲載しています。こうした資料を参考にしながら、今後の自社の出張の在り方について検討を行っていけるとよいでしょう。
参考リンク
パーソル総合研究所「出張に関する定量調査」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/business-trip.html
産労総合研究所「2023年度 国内・海外出張旅費に関する調査結果」
https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/shanaiseido/shuccho/pr2312.html
財務省「旅費等実態調査(民間企業の旅費規程等に関する実態調査)」
https://www.mof.go.jp/about_mof/mof_budget/release/itaku/seikabutsu/20240628ryohitoujittaityousa.pdf
(菊地利永子)