転職に積極的な若手世代が「転職を考えない」職場の特徴

 転職市場の活況に加え、労働者のキャリア意識の変化、労働移動を促進する政策の展開などにより、転職を考える社員が非常に多くなっています。企業としては深刻な人手不足の中、如何にいまの従業員の定着を図るかは大きなテーマとなっています。そこで本日は、日本能率協会総合研究所の「働きがい1万人調査」から、従業員の転職意向と、中でも転職に積極的な25歳から34歳の世代の定着のポイントについて見ていくことにします。なお、本調査の対象は、従業員300名以上の企業における会社員・会社役員10,000名となっています。

 まず、現職からの転職意向を見ると、全体では「転職活動中」が8.1%、「直近3年以内に転職を考えたことがあるが転職はしていない」が35.9%と、合計で44.0%が転職予備軍となっています。平均よりも転職意向が強い20代後半から40代前半の結果は以下のようになっていますが、中でも25~34歳は過半数が転職予備軍となっており、その定着促進は重要なテーマであると言えます。
■転職活動中
 25~29歳 10.5%
 30~34歳 7.2%
 35~40歳 10.6%
 40~45歳 8.6%
■直近3年以内に転職を考えたことがあるが転職はしていない
 25~29歳 34.5%
 30~34歳 45.0%
 35~40歳 43.3%
 40~45歳 38.2%

 この25~34歳までの転職アクティブ世代の定着はすべての企業における重要テーマですが、彼らが今の会社で転職を考えたことがない理由の上位は以下のようになっています。
 26.9% 今の会社の今の仕事にやりがいを感じているから
 26.4% 今の会社の勤務地に満足しているから
 22.9% 今の会社の給与に納得しているから
 21.3% 今の会社で心身に不調を来すことなく働けているから
 20.8% 今の会社で柔軟な働き方ができるから
 18.0% 今の会社の職場環境が快適だから
 15.0% 今の会社の職場メンバーを信頼しているから
 15.0% 今野会社で転居を伴う異動がないから

 勤務地、給与、柔軟な働き方など労働条件についての項目が並んでいますが、それらを押さえたトップは「今の会社の今の仕事にやりがいを感じているから」となっています。採用のフェーズにおいてはどうしても「働きやすさ」が前面に出ますが、定着という観点では「働きがい」がより重要になることが分かります。この働きやすさと働きがいの両立こそが、人材を安定的に確保し、この労働力人口減少時代においても安定的に成長できる企業となるのでしょう。


参考リンク
株式会社日本能率協会総合研究所「働きがい1万人調査(2024/9/11)」
https://jmar-im.com/column_es/es2409/

(大津章敬)