退職の際、14.6%が有給休暇の買取制度を利用

 退職や休職等による欠員発生後、77.0%の組織で補充がなされていないことや、欠員発生後、後任・上司の残業時間が伸び、バーンアウトリスクが高まっていたこと等を定量調査により明らかにし、大手メディアでも取り上げられるなど話題を呼んだパーソル総合研究所の「オフボーディング(欠員発生時の組織的取組)に関する定量調査」(2024/11/27)。今後人材流動性がますます高まることが予想される中、オフボーディングに注目し、欠員発生時の組織への負の影響とそれを和らげる要因等を明らかにした、読み応えのあるレポートとなっています。

 今回は同レポートの付属資料から、欠員発生時の各種制度利用に関する調査結果を見ていきたいと思います。


(1)退職時の有給休暇の消化率
「100%消化」      ・・・15.5%
「70~90%消化」  ・・・17.6%
「40~60%消化」  ・・・13.8%
「10~30%消化」  ・・・17.6%
「全く使っていない」・・・15.5%
 退職時の有給休暇の消化率は平均60.0%で、退職者の36.6%が100%消化している一方、15.5%は全く使っていない。退職の伝達時期が早期であるほど、消化率が高い。

(2)退職時の有給休暇の買取制度利用率
「残っていた有給休暇を買い取ってもらった」     ・・・14.6%
「買取制度はあったが、買い取ってもらわなかった」  ・・・  9.5%
「買取制度はなかった/買取制度があるか知らなかった」・・・75.9%

(3)同僚への産休・育休手当(一時金)希望額
「 不  要 」・・・21.5%
「 5万円 」・・・19.1%
「 3万円 」・・・15.9%
「 1万円 」・・・13.4%

 同僚が産休・育休を取得する際、送り出す側の同僚に支給される手当(一時金)の希望額への回答は、「不要」が最多で、「5万円」「3万円」も多かった。希望する金額には、同僚の産休・育休取得後の残業時間(長いほど希望額が高くなる)との関連性が見られた。


 同レポート本文では、「欠員が発生した際に業務の引継ぎ担当となった5割近くの従業員が引継ぎ不足を感じていること」や「引き継いだ後の業務理解度の高さが、後任の成長展望を高め、退職意向やバーンアウトリスクを引き下げていること」が指摘されています。また、引継ぎ時間を確保できないチームの特徴として「ハイコンテクスト文化」や「トップダウン志向」「日常的に休みが取りにくい」という傾向があることも明らかになっています。

 これらの指摘から、業務を個人ではなくチームで理解することで、休みも取りやすく、引継ぎの負荷も下がっていく様子が伺えます。退職時の有給休暇をめぐる労務トラブルは少なくありませんし、こうしたトラブルを防ぐことも兼ねて、常日頃から、業務体制・文化を整え、欠員発生の際の引継ぎの負荷をできるだけ少なくしておき、退職の連鎖を招かないよう備えておきたいところです。


参考リンク
パーソル総合研究所「オフボーディング(欠員発生時の組織的取組)に関する定量調査」(2024/11/27)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/offboarding.html

(菊地利永子)