労働政策審議会、カスハラ対策義務化を含む建議を公表

 労働政策審議会は、昨年12月26日、「女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について」と題する建議を公表しました。

 この中の「必要な対応の具体的な内容」としては以下のような項目が挙げられています。
1.女性の職業生活における活躍の更なる推進
⑴女性活躍推進法の延長
⑵中小企業における取組の推進
⑶女性の職業生活における活躍に関する情報公表の充実
 ①男女間賃金差異の情報公表の拡大
 ②女性管理職比率の情報公表の義務化等
 ③情報公表必須項目数
 ④「女性の活躍推進企業データベース」の活用強化
⑷職場における女性の健康支援の推進
⑸えるぼし認定制度の見直し
 ① えるぼし認定基準の見直し
 ② えるぼしプラス(仮称)の創設

2.職場におけるハラスメント防止対策の強化
⑴職場におけるハラスメントを行ってはならないという規範意識の醸成
⑵カスタマーハラスメント対策の強化
 ①雇用管理上の措置義務の創設
 ②カスタマーハラスメントの定義
 ③上記のほか指針等において示すべき事項
 ④他の事業主から協力を求められた場合の対応に関する規定
 ⑤カスタマーハラスメントの防止に向けた周知・啓発
⑶就活等セクシュアルハラスメント対策の強化
 ①雇用管理上の措置義務の創設
 ②求職者に対する情報公表の促進
⑷パワーハラスメント防止指針へのいわゆる「自爆営業」の明記

 今回の建議の中で、もっとも注目を集めているのが、カスタマーハラスメント対策を雇用管理上の措置義務とするという内容でしょう。ここではカスタマーハラスメントの定義を以下の3つの要素のいずれも満たすものとして、その対策を求めています。
顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うこと。
社会通念上相当な範囲を超えた言動であること。
労働者の就業環境が害されること。

 具体的には、対象となる行為の具体例やそれに対して事業主が講ずべき雇用管理上の措置の具体的な内容を指針において明確化することになるようです。4月からは東京都のカスハラ条例も施行されることから、この問題への社会的な関心はますます高くなっていくことでしょう。なお、今回の建議を受け、改正女性活躍推進法案は今通常国会に提出され、2026年4月にも施行されることになると予想されます。


参考リンク
厚生労働省「労働政策審議会建議「女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について」を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000073981_00016.html

(大津章敬)