人手不足の進行で約3社に1社となった65歳以上定年企業
厚生労働省は昨年末、令和6年「高年齢者雇用状況等報告」(6月1日現在))の集計結果を公表しました。その結果が概要は以下のとおりとなっています。
(1)65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況
65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%[変動なし]
- 中小企業では99.9%[変動なし]、大企業では100.0%[0.1ポイント増加
- 高年齢者雇用確保措置の措置内容別の内訳は、「継続雇用制度の導入」により実施している企業が67.4%[1.8ポイント減少]、「定年の引上げ」により実施している企業は28.7%[1.8ポイント増加]
(2)70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況
70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は31.9%[2.2ポイント増加]
- 中小企業では32.4%[2.1ポイント増加]、大企業では25.5%[2.7ポイント増加]
(3)企業における定年制の状況(10ページ表5)
65歳以上定年企業(定年制の廃止企業を含む)は32.6%[1.8ポイント増加]
この中で特に注目したいのが、65歳定年以上の定年制を採用している企業の増加です。65歳以上の定年(定年制の廃止を含む)制を採用している企業の割合を企業規模別で見ると、以下のようになっています。
全体 32.6%(30.8%)
21~30人 39.1%(37.3%)
31人~300人 31.5%(29.7%)
301人以上 20.6%(18.1%)
このように全体で32.6%と、ほぼ3社に1社が65歳以上の定年制を採用しており、中でも21~31人規模企業では4割に迫る数値となっています。公務員は現在、65歳定年に向けて段階的に定年年齢の引き上げを行っているところですが、民間企業においては未だ65歳定年の義務化がなされている訳ではありません。そんな中、65歳以上の定年への引き上げを行っている背景には人手不足があります。人手不足の深刻化により、60歳以上にシニア社員も重要な戦力となっている企業が増加しており、そうしたシニア社員のモチベーションを下げることなく、現役感をもって働いてもらうために、定年の引き上げが積極的に行われています。
実際に定年の引き上げを行う際には、退職金制度や賃金制度、場合によっては役職定年制度などの見直しも必要となります。人手不足が深刻化する中、今年は更に多くの企業で定年引上げの議論が行われることになるのではないでしょうか。
参考リンク
厚生労働省「令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46971.html
(大津章敬)