休憩のあり方が労働者の健康・生産性に与える影響が明らかに
休憩時間は労働者が権利として労働から離れることが保障されている時間であり、労働基準法第34条では、「労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない」と定められています。
今回、パーソル総合研究所は、この休憩時間に着目し、正規雇用就業者を対象に「正規雇用就業者の休憩実態とその課題を明らかにすること」「休憩が及ぼす心身や業務への影響を明らかにすること」「休憩で休むための過ごし方の示唆を得ること」を目的に、「はたらく人の休憩に関する定量調査」を実施。その結果が今般公開されました。今回は同レポートの概要を紹介します。
(1)正規雇用就業者の休憩の実態について
今回の調査によると、45分以上休憩している人は約8割で、特に月曜日に多く、金曜日にかけて短くなる傾向があったということです。また、休憩後に業務へ集中できる割合は同様に、月曜日が最も高く、金曜日にかけて低下していくことが明らかになりました。
(2)休憩の実感と業務への影響について
休憩時間が長いほど、休憩後は「業務に集中して取り組める」傾向にあり、また、休憩で休めている実感のある人ほど、休憩後は「業務に対して集中して取り組める」と回答している割合が高くなりました。
休憩時間とプレゼンティズム(出勤しているが、心身の健康上の問題があり、生産性が下がる状態)および「休めている実感」とプレゼンティズムの発生割合については、休憩していない人は休憩している人に比べてプレゼンティズムの発生割合が高く、また「休めていない実感」がある人のほうが「休めている実感」がある人よりも発生率が高かったということです。
同時に、休憩で「休めている」実感のある人は、上司や同僚が快く承認してくれる職場環境が影響しており、逆に「休めていない」実感のある人は、上司や同僚が休憩を重要視していない傾向がありました。
(3)休憩の過ごし方について
休憩の過ごし方については、大きく6つのタイプに分類され、そのうち、最も休めている実感が高かったのが、身体を動かしたり自己啓発をして過ごす「自己投資タイプ」であり、上司・同僚と会話や食事をしてすごす「交流タイプ」は生産性が下がる状態になりにくいことも明らかになりました。
今回のレポートでは、全体的に休憩時間が長い人や「休めている」実感のある人は、労働生産性にポジティブな影響を与えていることから、質の高い休憩の導入は、業務効率を高めるために重要であるということを示唆し、また、職場環境や文化が休憩の質に影響しており、職場文化の見直しやよりよい休憩を過ごせるような空間づくりの工夫などが提案されていました。
こうした状況が定量的に可視化されることで、今後、従業員の心身の不調予防と業務パフォーマンスの向上に寄与する休憩環境の整備につながることが期待されます。人事労務に携わる方には、一読をおすすめしたいレポートです。
参考リンク
パーソル総合研究所「はたらく人の休憩に関する定量調査」
https://rc.persol-group.co.jp/news/202501301000.html
(菊地利永子)