「1on1」経験した部下は約6割と普及も、面談に満足しているのは約半数

 近年急速に普及した上司と部下の1on1ミーティングですが、その課題も指摘されています。

 今回、パーソル総合研究所は、この1on1ミーティングが部下の成長に結びつく手がかりを探ろうと、「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」を実施。先日その結果が公開されました。今回は同調査の概要および結果を一部抜粋しご紹介します。

調査対象:直近半年間で「部下の成長支援を目的とした面談(1on1)」を行った正社員20~59歳:3,000名(*従業員50名未満の企業は除外。第一次産業、公務、その他は除外*上司は「課長相当、部長相当、事業部長相当」、部下は「一般社員・従業員、係長相当」*ライスケール1問正答者)
調査方法:調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査時期:2024年6月11日 – 6月13日

●同調査における「1on1」「成長」の定義
・1on1の定義:部下の成長支援を目的とした上司と部下の一対一の定期面談
・成長の定義:1on1を通じて、部下が経験学習における「内省的観察」と「抽象的言語化」が出来るようになること


(1)1on1の実態
●1on1の経験率(直近半年で経験した部下の割合)
 この半年間で行うことがあった…55.7%
 過去には行っていたが、この半年間は行っていない…26.9%
 これまでに1度も行ったことがない…17.5%

●1on1の満足度(1on1を経験した部下の満足度)
 非常に満足… 3.9%
 満足…18.7%
 やや満足…30.2% 
 どちらともいえない…32.4% 
 やや不満…6.2% 
 不満…4.0% 
 非常に不満…4.7%

 満足(非常に満足・満足・やや満足の合計)が52.7%、不満・どちらともいえない(非常に不満・不満・やや不満・どちらともいえないの合計)が47.3%という結果になった。

(2)1on1に関する困りごと
●【上司】1on1に関して困っていること(複数回答)
 面談について学ぶ仕組みがない…35.4%
 私が多忙で、面談のスケジュール設定が難しい…35.3%
 面談の効果が感じられない…27.6%

●【部下】1on1に関して困っていること(複数回答)
 面談の効果が感じられない…29.7%
 面談について学ぶ仕組みがない…28.3%
 上司が多忙で、面談のスケジュール設定が難しい…26.3%

 上司、部下ともに手探り状態のまま1on1が行われており、そのことに上司・部下が困っている実態が明らかになっている。

(3)1on1の運用と部下の成長
●1on1時に部下の話す割合と成長(点)
 部下の話す割合が高い…6.8点
 部下と上司の話す割合は同じ…6.8点
 上司の話す割合が高い…6.3点

●1on1時に部下がテーマ設定する割合と成長(点)
 部下がテーマを設定…6.9点
 上司がテーマを設定…6.4点

 部下が1on1時に上司よりも話す割合が高いと部下の成長度も高く、また、1on1時の話すテーマを部下が決めていると部下の成長度も高かった。


 今回のレポートでは、これまでに焦点があてられることが少なかった、1on1と部下の成長に関し、様々な観点から定量的に分析がなされています。また、そこから浮かび上がった実態や課題を踏まえた、部下の成長につながる具体的な1on1のポイントだけでなく、人材育成、組織の在り方へと広がる提言がまとめられています。従業員の成長により効果的な施策の検討や実施に有用な、中身の濃いレポートで、組織で人事・人材開発に携わる方は一読をしておきたい資料となっています。


参考リンク
パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/1on1.pdf

(菊地利永子)


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