44.3%の中小企業が最低賃金割れによる賃金引き上げを実施
最低賃金については2020年代の間に全国加重平均で1,500円を目指すという方針が打ち出され、昨年秋にも51円(全国加重平均)の引き上げが行われました。本日はその中小企業への影響を、東京商工会議所の「中小企業における最低賃金の影響に関する調査(2025/3/5)」から見ていきたいと思います。なお、本調査は全国47都道府県の中小企業3,958社を対象に実施、集計されたものとなります。
(1)2024年の最低賃金引き上げの対応
44.3% 最低賃金を下回る従業員がいたため、賃金を引き上げた
27.4% 最低賃金を下回る従業員がいなかったが、賃金を引き上げた
28.3% 最低賃金を下回る従業員がいなかったため、賃金を引き上げなかった
「最低賃金を下回る従業員がいたため、賃金を引き上げた」という回答は2023年は38.4%でしたので、+5.9%という大幅の伸びとなっています。
(2)地域による「最低賃金を下回る従業員がいたため、賃金を引き上げた」割合
44.3% 全体
32.4% 都市部(東京23区・政令指定都市)
46.4% 地方(政令指定都市以外)
このように都市部と比較すると、地方企業の回答割合は14.0ポイントも高くなっており、特に地方において最低賃金引き上げの影響が大きいことが分かります。
(3)最低賃金引上げにともなう人件費増への対応
31.4% 具体的な対応が取れず、収益を圧迫している
26.9% 人件費増加分の製品・サービス価格への転嫁
22.3% 原材料費等増加分の製品・サービス価格への転嫁
19.6% 支払い原資に余力があり、特に対応は行っていない
18.8% 生産・業務プロセスの見直しによる生産性向上
17.3% 設備投資の抑制等、人件費以外のコストの削減
16.0% 残業時間・シフトの削減(非正規社員含む)
6.2% 従業員数の削減、採用の抑制(非正規社員含む)
4.5% 他の従業員の賃上げ抑制、一時金等の削減
3.7% その他
「具体的な対応が取れず、収益を圧迫している」という回答がトップで31.4%となっています。この回答は都市部では28.8%であるのに対し、地方では31.8%、地方の20人以下企業では34.5%と値が高くなっています。
このように非常に厳しい状況が明らかになっており、政府目標通りの引き上げが行われた場合には、15.9%が「収益悪化により事業継続が困難(廃業、休業等の検討」と回答しています。最低賃金の引き上げ以前に、人手不足により初任給も含めた賃金水準が上昇していることから、価格転嫁も含めた収益改善が企業存続の絶対条件となっていくことになるでしょう。
参考リンク
東京商工会議所「中小企業における最低賃金の影響に関する調査(2025/3/5)」
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1205533
(大津章敬)