企業へのカスハラ防止を義務付けた改正労働施策総合推進法等が公布
カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」という)を防止対策は、東京都が先行して条例を制定することで、東京都の企業を対象に義務化されてきましたが、それを追うような形で今国会に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(以下「改正労働施策総合推進法等」という)の法案が提出され審議されてきました。そして、2025年6月4日に参議院で成立、2025年6月11日に公布されました。
その概要は以下の通りとなっています。
1.ハラスメント対策の強化
①カスタマーハラスメントを防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付け、国が指針を示すとともに、カスタマーハラスメントに起因する問題に関する国、事業主、労働者及び顧客等の責務を明確化する。
②求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を義務付け、国が指針を示すとともに、求職者等に対するセクシュアルハラスメントに起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務を明確化する。
③職場におけるハラスメントを行ってはならないことについて国民の規範意識を醸成するために、啓発活動を行う国の責務を定める。
2.女性活躍の推進
①男女間賃金差異及び女性管理職比率の情報公表を、常時雇用する労働者の数が101人以上の一般事業主及び特定事業主に義務付ける。
②女性活躍推進法の有効期限(令和8年3月31日まで)を令和18年3月31日まで、10年間延長する。
③女性の職業生活における活躍の推進に当たっては、女性の健康上の特性に配慮して行われるべき旨を、基本原則において明確化する。
④政府が策定する女性活躍の推進に関する基本方針の記載事項の一つに、ハラスメント対策を位置付ける。
⑤女性活躍の推進に関する取組が特に優良な事業主に対する特例認定制度(プラチナえるぼし)の認定要件に、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止に係る措置の内容を公表していることを追加する。
⑥特定事業主行動計画に係る手続の効率化を図る。
3.治療と仕事の両立支援の推進
事業主に対し、職場における治療と就業の両立を促進するため必要な措置を講じる努力義務を課すとともに、当該措置の適切・有効な実施を図るための指針の根拠規定を整備する。
法案は衆議院で一部修正が行われていますが、いずれにしても企業にカスハラ対策および就職活動におけるセクシュアルハラスメント対策を義務づけるものになっています。また、時限立法である女性活躍推進法の延長も行われ、企業と仕ても引き続き、女性活躍推進への取組みが求められます。
今後、具体的な内容が厚生労働省から公表されることになるかと思いますので、情報を確認し、対応を進めて行く必要があります。
参考リンク
厚生労働省「第217回国会(令和7年常会)提出法律案」
https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/217.html
参議院「議案情報」
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/217/meisai/m217080217050.htm
(宮武貴美)