70%の中小企業で進む賃上げと遅れる価格転嫁
ここ数年の賃上げは中小企業にとって大きな負担となっています。そこで今回は、全国中小企業団体中央会の令和7年度 中小企業労働事情実態調査の結果からこの現状を見ていくことにします。なお、この調査は、従業員規模300人以下の39,849事業者を対象に行い15,371事業者から回答を得て、2025年7月1日時点の状況を集計したものとなっています。
(1)賃金の引き上げ状況
引き上げた 55.9%(平成27年度 44.3%)
引き上げた+引き上げる予定 70.2%(同53.5%)
(2)賃金決定要素
労働力の確保・定着 61.5%(47.7%)
企業の業績 51.5%(65.3%)
物価の動向 44.7%(13.0%)
世間相場 37.5%(22.4%)
賃上げムード 21.8%(8.9%)
労使関係の安定 16.0%(20.2%)
前年度の改定実績 14.0%(17.3%)
その他 7.9%(11.2%)
燃料費の動向 4.2%(11.5%)
(3)経費アップ分の販売・受注価格への転嫁状況
※「価格引き上げ(転嫁)を実現した」という回答の割合
全国 51.2%
1~4人 43.8%
5~9人 48.8%
10~20人 52.2%
21人~29人 52.7%
30~99人 54.4%
100~300人 56.8%
このように労働力の確保・確保定着や物価の上昇を背景に中小企業でも7割の企業で賃金の引き上げが行われていますが、規模が小さいほど価格転嫁ができていない状況が見えてきます。今後も最低賃金も含む賃金の状況は続くことが予想されます、企業の持続可能性を確保するためには価格転嫁も含めた収益の確保が不可欠です。数年後に予想される状況から逆算して、いま行うべきことを議論し、確実に実施していきましょう。
参考リンク
全国中小企業団体中央会「令和7年度 中小企業労働事情実態調査結果(2925/11/4)」
https://www.chuokai.or.jp/images/2025/11/20251104_R7roudougaiyou.pdf
(大津章敬)

