新たな働き方改革を議論する厚生労働省「労働市場改革分科会」が始動
2019年に始まった働き方改革ですが、当初は労働時間の絶対的上限規制や同一労働同一賃金の推進などの法規制の強化を中心とした内容が中心でしたが、今後は実際の働き方を改革する内容が中心になりそうです。そうした新たな働き方改革を議論する厚生労働省の「労働市場改革分科会」が2026年3月11日に始動しました。
今回の分科会の資料を確認すると、労働時間法制以外に以下の3つが大きなテーマとして掲げられています。
- 労働生産性の向上
- 労働移動の促進
- 労働参加の促進
以下は各テーマの論点として挙げられている事項です。
(1)労働生産性の向上
- 労働生産性の向上を持続的な賃上げにつなげることが重要。そのためには、労働生産性の向上に資する産業政策との連携を図ることが重要であり、国や地域におけるリ・スキリングの推進が必要。これらの取組について今後どのような連携が考えられるか。
- 「人的資本投資」の促進のためには、企業の競争力強化につながる人材育成の支援が重要。また、スキル需要に応じた労働者のスキル取得を促す仕組みが重要だと考えられるが、どのような方法が考えられるか。
- 人的資本の強化には、リ・スキリング等が重要だが、企業が従業員の教育訓練に関して支出した費用は概ね横ばい。企業における取組を一層促進するためにどのような施策が考えられるか。また、リ・スキリングのための支援策が効果的であることをどのように確認していくべきか。
- 自己啓発を実施した労働者の割合は、正社員は約45%で概ね横ばい、正社員以外は約15%でやや低下傾向であり、自己啓発の一層の活性化が必要。そのためには、労働者がスキルを習得することのインセンティブを高めることが重要だが、どのような方法が考えられるか。
- 社会を支えるエッセンシャルワーカー等の労働生産性の向上のため、業務効率化等を推進する人材の育成や企業向けの取組としてどのようなことが考えられるか。
- DX化を含めた設備投資、事業承継・M&Aの環境整備や更なる取引適正化等、企業におけるビジネスモデルの転換などを通じて労働生産性を高め、持続的な賃上げにつなげることも重要。労働生産性の向上と持続的な賃上げをつなげるための取組として、どのようなことが考えられるか。
- これらに関連して企業に求められるマネジメントとしてどのようなことが考えられるか。その際、特に地域経済の大宗を占める中小企業におけるマネジメント向上のための相談支援等が重要であるが、どのようなことが考えられるか。
(2)労働移動の促進
- 引き続き、省力化による生産性向上に取り組みつつ、国際的にみると我が国は労働移動が活発ではなく、同一産業、同一職種の労働移動が多い現状の中、成長産業や社会を支えるエッセンシャルワーカー等の分野への移動等を促す観点から、どのようなことが必要か。
- 転職を希望しながら転職活動をしていない者のうち、「自分に合った仕事がわからない」「仕事の探し方がわからない」などの理由を挙げている者に対して、労働者の適職選択に資する職業情報の提供を更に進めるべきではないか。具体的には、職業情報・職場情報の提供などの「労働市場の見える化」を行うことで、個人が希望する職業選択やリ・スキリングをしやすい環境を整えることが必要ではないか。その際、人手不足に悩む中小企業にも支援となるよう、中小企業の情報の提供に配意すべきではないか。
- 労働者の希望に応じた労働移動の実現に向けては、円滑かつ安心して労働移動できることが必要だが、セーフティネットの在り方についてどう考えるか。
- 労働移動の促進には、労働者が自らの意欲と能力を最大限発揮できるよう、労働者主体でのリ・スキリングを含めたキャリア形成が重要だが、そのためにはどのような取組が必要か。
- 労働力希少社会における中小企業の人材確保に向けて、企業に求められるマネジメントの向上に関して、どのような取組が必要か。また、ハローワークによるマッチング機能の果たすべき役割をどう考えるか。
(3)労働参加の促進
- 働く意欲はあるが、育児や介護との両立に課題を抱える女性や高齢者、障害者等で潜在的に就業意欲がある者の更なる労働参加を促進するためにはどのようなことが必要か。
- 外国人労働者が在留資格の範囲内で適正に就労するためにはどのようなことが必要か。
- 労働力供給制約が進むとともに、職業人生が長期化するなかで、労働者が高齢期を含む職業人生にわたって望むキャリアを形成し、能力を獲得・発揮しつづけていくための支援が求められているが、どのようなことが必要か。
- 労働者の健康確保も図りつつ、労働時間制度については、柔軟で多様な働き方の実現に向け、運用・制度の両面からどのような対応が考えられるか。
- これらに関連して、企業において労働参加の促進に向けた人材マネジメントを高めるためにどのようなことが求められるか。その際、特に中小企業について、個々の経営課題に応じて様々な支援機関と連携して人材マネジメントに関する相談支援等が重要ではないか。
これらの論点からは、主に以下の4つの柱について議論されることが分かります。
- 労働移動の円滑化: 成長産業への移動や、労働市場の見える化。
- 人的資本の強化: リスキリングの促進と、賃上げへの還元。
- 多様な人材の活躍: 女性・高齢者・外国人等の就業促進と、柔軟な働き方。
- 中小企業支援: 経営課題に即したマネジメント向上と相談体制の構築。
今後の議論が注目されます。
参考リンク
厚生労働省「第1回労働市場改革分科会(2026/3/11)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71297.html
(大津章敬)

