新卒採用の充足率50%未満の中小企業が31.1%

中小企業においては、従業員の採用や定着に大きな課題を抱えている事例が多く見られます。そこで本日は、日本政策金融公庫の調査結果から、新卒採用・中途採用のそれぞれにおける現状と課題をまとめたいと思います。なお、本調査の対象は、同当公庫(中小企業事業)取引先12,632社で、有効回答数4,123社となっています。
(1)新卒採用
新卒採用全体では、予定数を確保できた企業(「100%」および「100%超」)が56.1%にのぼる一方、予定の半分も採れなかった「50%未満」の企業が31.1%存在し、明暗が分かれています。

特に注目すべきは、従業員「49人以下」の小規模企業における二極化です。55.0%の企業が100%以上の予定数をきっちり確保している一方で、38.5%の企業が「50%未満」という大苦戦を強いられています。新卒採用は母集団形成や知名度の影響を受けやすく、小規模企業ほど一歩躓いた際のリスクが跳ね上がる現状が浮き彫りとなっています。

(2)中途採用
中途採用では、全体として予定数を確保できた割合が67.6%と、新卒に比べて高い水準を維持しています。しかし、規模別の動向を見ると異なる課題が見えてきます。

新卒採用とは異なり、中途採用では「企業規模が小さくなるほど、50%未満(未充足)の割合が高くなる」という明確な傾向(49人以下:15.7%、50〜99人:10.5%、100人以上:8.0%)があります。即戦力人材の獲得競争において、知名度や資金力、待遇面で劣る小規模企業が苦戦を強いられている要因が如実に表れています。

人材募集で工夫したことの項目を見ると「初任給の引き上げ」が43.4%でトップとなっていますが、多くの中小企業では現実的に大手・中堅企業の初任給引き上げに付いていくのは困難であり、非常に厳しい状況となっていますが、この状況を打破するため、以下の視点で採用戦略を見直す必要があります。
(1)採用競争力の再定義
大手と同じ土俵(給与額のみなど)で戦わず、柔軟な働き方や早期の裁量権など、中小ならではの魅力を言語化する。
(2)歩留まりの改善
応募から面接、内定出しまでのスピードを極限まで早め、大手に先んじて優秀な人材を囲い込む。
(3)採用手法の多様化
従来の求人媒体だけに頼らず、ダイレクトリクルーティングやリファラル(社員紹介)採用を強化し、潜在層へ直接アプローチする。

できるだけ人手に頼らない事業モデルの構築が重要になっていますが、それでも一定の人員が必要なことは間違いありません。事業継続のためには人材の安定確保に向けた工夫を進めていきましょう。


参考リンク
日本政策金融公庫「中小企業における従業員の採用・定着に関する調査」結果(2026/6/19)」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/tokubetu_260619.pdf

(大津章敬)