転勤経験者の35%が「転勤をきっかけに退職を考えたことがある」と回答
採用難が続くなか、社内人材の活用や適切な配置は人事に課された重要な課題です。しかし、その手札の一つである「転勤」が、実は優秀なミドル人材の離職リスクを孕んでいます。そこで本日は、エン株式会社が実施した「転勤・単身赴任実態調査」(2026年8月発表)のデータをもとに、ミドル世代のリアルな意識と人事部門が取るべき対応を紐解きます。
(1)半数以上が転勤経験あり。年収帯が高くなるほど高比率に
ミドル世代の転勤経験について見ると、55%が「これまでに転勤経験がある」と回答しました。このデータを年収帯別で細かく見ると、興味深い傾向が浮かび上がります。
年収599万円以下:44%
年収600万円〜999万円:56%
年収1000万円以上:77%
高年収帯、すなわちマネジメント層やコア人材であるほど転勤経験者の割合が高くなる実態が示されています。また、職種別では「コンサルタント系」(75%)が最多となりました。
(2)帯同ではなく「単身赴任」が76%。35%が「退職」を意識
転勤経験者の生活形態に目を向けると、「単身赴任をした」割合が76%に達しており、「家族揃って転居した」ケースは約4人に1人(24%)にとどまりました。子どもの進学や持ち家の所有、パートナーのキャリアなど、ミドル世代ならではの家庭環境が背景にあると考えられます。
さらに懸念すべきは離職への影響です。転勤経験者の35%が「転勤をきっかけに退職を考えたことがある」(うち「実際に退職した」は5%)と回答しました。具体的な理由として、二重生活による経済的・精神的負担や、配偶者の出産・ワンオペ育児、子どもの教育環境などが挙げられています。
(3)年代で異なる「転勤への心理的ハードル」
転勤によるデメリットとして最多となったのは「単身赴任で家族と離れ離れになった」(41%)でした。注目したいのは、「退職のキッカケになった(退職した)」という回答の年代別ギャップです。
30代:46%
40代:25%
50代:16%
60代以上:11%
若い年代ほど、転勤に対する心理的なハードルや抵抗感が顕著に高くなっています。キャリアの選択肢が多く、ワークライフバランスを重視する若手・若手ミドル層ほど、強引な転勤辞令が直接的な離職につながりやすいと言えます。
(4)「条件付き許容」を捉えた人事施策を
一方で、「今後、転勤の辞令が出た場合の対応」についてのデータからは希望も見えてきます。
家族で赴任する場合: 50%が承諾(「承諾する」「条件付きで承諾する」の合計)
単身で赴任する場合: 68%が承諾
ミドル世代の多くは転勤そのものを全否定しているわけではありません。「任期の明示」「帰省費用や生活費の補助」「介護や育児への柔軟な配慮」といった明確な条件や支援制度が提示されれば、前向きに検討する姿勢を持っています。
転勤は「成長機会になった」(67%)、「人脈が広がった」といったポジティブな側面を持つ一方で、制度設計を誤れば貴重なミドル人材を失う刃にもなります。ワークライフバランスの重要性が高まる中、今後は一律的な転勤命令から脱却し、「任期の明確化」「家族事情に応じた手当・手厚いサポート」「リモートワーク等の柔軟な働き方の導入」を進めることが求められています。社員の置かれた状況に寄り添った個別の配慮こそが、ミドル人材の定着と活躍を両立させる鍵となります。
参考リンク
エン「ミドル世代に聞いた「転勤・単身赴任」実態調査」
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2026/46334.html
(大津章敬)

