初任給引き上げ以外での工夫が進む求職者へのアピールポイント
近年、新卒採用市場において「初任給の引き上げ」が大きなトレンドとなっています。しかし、他社との「給与引き上げ競争」だけで自社の魅力を差別化し、優秀な人材を獲得し続けることには限界を感じている人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
マイナビの「2027年卒企業新卒採用予定調査」における「初任給引き上げ以外に待遇面で学生にアピールしていること」のデータからは、企業が学生にどのような魅力を訴求しようとしているのか、そして「上場企業」と「非上場企業」でのアピール戦略の違いが浮き彫りになっています。以下では、このデータをもとに、これからの新卒採用で成果を出すための待遇アピールのポイントを解説します。
(1)上場企業と非上場企業で大きく分かれる「主戦場」
調査結果を見ると、上位3つの項目(住宅手当・借り上げ社宅/諸手当/休暇制度)がアピール要素として高い割合を占めていますが、企業規模や上場・非上場によってその注力ポイントに明確な差が見られます。
〇住宅手当や借り上げ社宅
全体では46.1%ですが、上場企業では73.8%と圧倒的な高水準を誇ります。一方、非上場企業は44.2%にとどまります。一人暮らしを始める学生にとって「生活費の直接的な補填」となる住宅支援は、上場企業にとって最強のカードの一つとなっています。
〇諸手当(営業手当、資格者手当など)
全体では49.8%ですが、非上場企業では51.1%と半数以上がアピールしており、上場企業(30.7%)を大きく上回っています。実務に即した手当や頑張りに応じた成果還元をアピールすることで、やりがいや実質的な収入増加を訴求する動きが見られます。
〇休暇制度
全体44.6%、上場企業44.2%、非上場企業44.7%と、企業の規模・属性を問わず約半数の企業が安定してアピールしています。ワークライフバランスや働きやすさへの関心が高いZ世代の学生に対し、標準装備すべき必須のアピール要素となっていることが伺えます。
(2)これからの採用で人事が取り組むべき3つの視点
このデータを自社の採用戦略に活かすためには、単に「制度を用意する」だけでなく、学生目線に立った工夫が必要です。
〇自社の強みに合わせたアピールポイントの明確化
大手・上場企業のように手厚い住宅手当を出すのが難しい場合でも、営業手当や資格手当といった「諸手当」や「スキルアップ支援」、あるいは「勤務地に関する制度(転勤なしなど)」を組み合わせることで、独自の魅力を構築することができます。
〇「制度の存在」だけでなく「実態」を伝える
「休暇制度あり」と書くだけでは学生の心には響きません。「有休消化率」「連休取得のしやすさ」「実際の取得エピソード」など、具体性とリアリティを持った情報発信が安心感につながります。
〇入社後の「実質的な手取り・生活イメージ」を可視化する
初任給の額面だけでなく、「住宅手当や各種補助を含めると実質的にいくら浮くのか」「どのような生活ができるのか」まで落とし込んで提示することが、他社との差別化につながります。
特に十分な賃上げ原資がない中小企業においては、様々な工夫をすることで大企業にはない魅力を作っていくことが重要です。
参考リンク
マイナビ「2026年度(2027年卒版)新卒採用・就職戦線総括2026年度(2027年卒版)新卒採用・就職戦線総括」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20261002_115682/
(大津章敬)

