「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会 中間取りまとめ」の発表

 今日、厚生労働省のホームページに「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会 中間取りまとめ」が掲載された。その概要のファイルに目を通したが、非常に大きな改革が検討されていることが分かる。是非実際の文書をお読み頂きたいが、特に影響が大きそうな項目について、箇条書きにしてみたい。


■試用期間
 労働契約において試用期間を設ける場合の上限を定める方向で検討することが適当である。また、試用期間であることが労働者に対して書面で明らかにされていなければ、通常の解雇よりも広い範囲における解雇の自由は認められないとする方向で検討することが適当である。


■就業規則の効力発生要件
 就業規則が拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するとする判例法理を法律で明らかにすることが適当である。また、現行の労働基準法上必要とされている過半数組合等からの意見聴取を、拘束力が発生するための要件とする方向で検討することが適当である。さらに、行政官庁への届出を就業規則の拘束力が発生するための要件とする方向で検討することが適当である。


■就業規則を変更することによる労働条件の変更(判例法理の整理・明確化)
 就業規則による労働条件の変更が合理的なものであれば、それに同意しないことを理由として、労働者がその適用を拒否することはできないという就業規則の不利益変更に関する判例法理を法律で明らかにすることを検討すべきである。


■出向
 使用者が労働者に出向を命ずるためには、少なくとも、個別の合意、就業規則又は労働協約に基づくことが必要であることを法律で明らかにする方向で検討することが適当である。


■懲戒の効力発生要件
 使用者が労働者に懲戒を行う場合には、個別の合意、就業規則又は労働協約に基づいて行わなければならないとすることが適当である。


■懲戒の手続
 減給、停職(出勤停止)、懲戒解雇のような労働者に与える不利益が大きい懲戒処分については、対象労働者の氏名、懲戒処分の内容、対象労働者の行った非違行為、適用する懲戒事由(就業規則等の根拠規定)を、書面で労働者に通知することとし、これを使用者が行わなかった場合には懲戒を無効とすることについて議論を深める必要がある。


■競業避止義務
 労働者に退職後も競業避止義務を負わせる場合には、労使当事者間の書面による個別の合意、就業規則又は労働協約による根拠が必要であることを法律で明らかにすることが適当である。さらに、退職後の競業避止義務については、競業避止義務の対象となる業種、職種、期間、地域が明確でなければならないとする要件を課し、これらを退職時に書面により明示することが必要とする方向で検討することが適当である。


■秘密保持義務
 不正競争防止法の保護する範囲以上に労働者に退職後も秘密保持義務を負わせる場合には、労使当事者間の書面による個別の合意、就業規則又は労働協約による根拠が必要であることを法律で明らかにすることが適当である。


■解雇の金銭解決制度
 解雇紛争の救済手段の選択肢を広げる観点から、仮に解雇の金銭解決制度を導入する場合に、実効性があり、かつ、濫用が行われないような制度設計が可能であるかどうかについて法理論上の検討を行う。


(大津章敬)