日産 適年の積立不足2280億円を現金で穴埋め

 今朝の日経1面のトップに「日産、企業年金に現金2280億円拠出・債務を前倒し処理」という記事が大きく取り上げられていた。同社は2004年度(2005年3月期)決算に関し、連結当期純利益が前年度比1.7%増で過去最高の5,123億円を達成したのであるが、その中から2280億円の現金を一括拠出し、企業年金の財務を健全化するそうだ。今時点では同社ホームページにこの件に関する情報が掲載されていないので、詳細は分からないが、7月に適年と厚生年金基金を柱とする企業年金制度を再編するようで、その際に信託銀行で退職給付信託を新たに設定するという手法をとる模様。

 

 多くの中小企業からすれば自社とは関係がない大企業の話と片付けられてしまいそうだが、できればこのニュースを見て、自社の退職給付の問題を考えるきっかけにして頂きたい。確かに2280億円の現金を用意するなんていうのはまったく想像もできないようなレベルの話であるが、企業年金を中心とした退職給付債務の問題は、退職金制度を有するすべての企業にとって、深刻な問題である。これはいつもセミナーなどでお話していることであるが、この問題を放置すれば傷口が広がることさえあれ、勝手に問題が解決するということはありえない。最悪の場合には退職金制度によって倒産に追い込まれる危険性さえある、重大な企業経営リスクである。まずは現状の把握から始め、早急に対策の立案を進めて頂きたいと願っている。

 

 なおroumu.comでは以前より「退職金制度診断システム」というExcelの簡単なシミュレーションを無料配布している。こちらも是非ご利用頂きたい。

 

(大津章敬)