2050年には3人に1人が65歳以上!?製造業の強い危機意識が明らかに


6月3日に政府より2005年度版「高齢社会白書」が発表されました。これによりますと、2004年10月1日現在、65歳以上の高齢者人口は2488万人に達したとのことです。これにより総人口に占める比率(高齢化率)は19.5%と過去最高を更新しました。結果として国民の約5人に1人は65歳以上ということになります。今後も我が国の高齢者人口は増加を続け、2050年には国民の約3人に1人が、65歳以上の高齢者という世界に例を見ない高齢社会の到来が見込まれています。


 今回の高齢社会白書では団塊世代が定年期を迎えて一斉に退職する「2007年問題」が初めて取り上げられました。熟練した社員の定年退職が集中することで、その技能の伝承に関する危機意識を感じている企業は全産業で22.4%に達しました。中でも技能の伝承が、その生産活動において重要な課題となる製造業においては30.5%と、この問題に関する危機意識の高さが明らかになっています。ちなみにこの原因としては、技能の伝承に時間がかかることや、意欲ある若年層の確保が難しいことなどが、挙げられるでしょう。


 しかし高齢者といっても、その多くは健康を維持しており、できるだけ長く働き続けたいという意思を持っています。今後の労働力不足の時代にはこうした高齢者の労働力を有効に活用していく以外、道はありません。3人に1人にまで増加すると言われる高齢者一人一人がその意思や能力に応じて生涯現役でいられる社会、雇用の仕組みを整備していくことが我が国の課題といえるでしょう。年月をかけたからこそ蓄積された能力は、今後ますます貴重な財産になるに違いありません。


最近では、日経新聞の一面を飾りましたのでご存知の方も多いと思いますが、トヨタ自動車が、60歳定年を迎えた社員を原則再雇用する新制度を2006年度にも導入する方針を明らかにしています。やはり高齢化による若年層の労働力不足への懸念と、技能伝承につなげる狙いによるものと言われています。国内製造業最大手であるトヨタ自動車が、他企業に先駆けて高年齢者雇用対策に踏み切ることは、今後の国内議論に大きな影響を与えることになるでしょう。


(伊藤里奈)