研修医は労働者と認定~最高裁

 6月3日に最高裁において、私立大学病院において臨床研修を受けていた医師(研修医)が、労働基準法及び最低賃金法の労働者に当たるという判決が出されました。

 

[事件の概要]
 この研修医が受けていた2年間の研修プログラムは、その1年目に外来診療において基本的な知識・技術および医師として必要な態度を修得した上で、2年目は関連病院において更に高いレベルの研修を行うというものでした。実態として、研修が開始されて数ヵ月後の実際の研修内容は、午前7時30分から午後10時まで入院患者の採血や点滴、一般外来の問診や点滴、処方せんの作成など、様々なものがあり、また指導医が宿直する際には、翌朝まで病院にて副直も行うこともありました。これに対して、学校側は研修研究期間中に月額6万円の奨学金と、1回1万円の副直手当の支給をしていました。

 

[判決の概要]
 判決では、指導医の指導の下に研修医が医療行為等に従事することを一方で認めながらも、この研修医に労働者性があるとされました。このように判断された理由には、学校側の指揮監督の下で労務の遂行を行ったことがあげられています。また、これ以外にも学校側が研修医に支給した奨学金等を給与として源泉徴収を行っていることも加えられています。結果、この研修医には労働者としての最低賃金法が適用されるという判断がなされ、支給されていた奨学金等のみでは最低賃金を下回るため、奨学金等と最低賃金額との差額に相当する賃金を支払う義務があるとされました。

 

 現在は雇用のミスマッチを防ぐためのインターンシップ制度や、インディペンデントコントラクターなど、労働形態が多様化が進んでいます。こうした状況において、今後、労働者性判断の問題は更に増加すると予想されます。今回の判決では賃金の問題が大きく取り上げられましたが、社会保険制度の適用についても今後、大きな問題になってくるでしょう。これからも、このブログではこうした問題を取り上げていこうと思います。

 

(宮武貴美)