労働基準法改正・労働契約法制定の動きとそのポイント

  厚生労働大臣が2005年4月より学識経験者を集め「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」を開催し、労働契約に関するルールの整理整備を行い、法律で明確化を図る検討が行なわれています。今後は2年程度かけ議論を重ね、2007年に労働基準法改正、新法制定を目指すという予定になっています。

 

 以下「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」が行った中間取りまとめより、そのポイントを抜粋し、紹介しましょう。

1)労働契約法の制定
・労働契約法とは、労使当事者が対等な立場で自主的に労働条件を決定することを促進し、労使紛争を防止するために、労働契約について明確なルールを定める法律として新設されるものです。性格としては、労働基準法とは異なる別の民事上のルールについて定めた新法で、履行確保のための罰則は設けず、監督指導は行わないものとなるようです。
・その他にも労働契約の成立・変動・終了に関して要件と効果を規定し、以下に挙げるような項目について検討することが適当であるとしています。
 □採用内定の留保解約権の行使について
 □試用期間の上限設定について
 □「雇用継続型契約変更制度」の導入について
 □配置転換の際に使用者が講ずべき措置について
 □出向を命ずるには労働契約、就業規則又は労働協約の根拠を必要とすることを明確にする
 □懲戒解雇などの懲戒処分について事由を書面で労働者に通知することとする
 □安全配慮義務や労働者の個人情報保護義務の明確化
 □解雇の金銭解決制度の導入について
・また、パート労働者等の有期契約労働者についての雇止めルールに関しても検討が行われる予定です。

 

2)労働基準法の見直し
・労働基準法についても以下のような項目について検討することが適当であるとしています。
 □採用内定期間中の労働基準法第20条の解雇予告制度の適用除外について
 □複数の事業場で労働する場合の労働時間通算規定の見直し
 □労働条件明示や就業規則の記載事項・作成手続きの見直し
 □労働基準法第18条の2(解雇)など民事的効力を有する規程を労働契約法に移行
・その他検討事項としては、以下のものが挙げられています。
 □就業規則の効力発生要件
 □労働基準法上の就業規則作成手続
 □休職制度があれば関連事項を就業規則の必要記載事項とすること
 □懲戒の効力発生要件
 □懲戒の手続きについて
 □競業避止義務について
 □秘密保持義務について
 □労働者の損害賠償責任について

 

 近年多様化する労働形態について、現在の法律では十分に対応できない、またできていないという考えから、このような新法制定、労働基準法改正に関する動きが出てきています。これらが実現した場合、今まで法的には曖昧で、運用でカバーされていたような部分にメスが入れられるということになり、実務上、その基準が明確に示されることになるでしょう。

 

 一方では解雇の金銭解決制度のように労働者にとっても大きな影響がある制度も検討されており、労使双方での激しい議論が行われることは必至と思われます。戦後の労働基準法制定以来の大改革に繋がる内容ですので、今後もこの研究会の動向に注目していきたいと思います。

 



 
(赤田亘久)