日本経団連 2005年規制改革要望を発表

 日本経団連は、2005年度規制改革要望を6月21日に発表しました。このうち、雇用・労働分野においては次の要望が提出されることになりました。その概要についてご紹介いたします。

 

有料職業紹介事業の手数料徴収に係る対象職業制限と年収制限の撤廃

 芸能家、モデル、科学技術者、経営管理者、熟練技能者であって年収700万円を超える仕事に就いた場合は賃金の100分の10.5を上限として手数料の徴収ができるが、この対象職業と年収に関する規制を撤廃する。

  

派遣労働者への雇用契約申し込み義務の廃止

 派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務に派遣労働者を3年を超えて受け入れており、その業務に新たに労働者を雇い入れ使用とするときはその派遣労働者に対して雇用契約の申し込み義務が生ずるがこれを撤廃する。

 

派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止の廃止

 派遣労働者を特定することは紹介予定派遣のみ許されているが、これを一般の派遣労働者にも解禁する。

 

派遣労働者のいわゆる自由化業務の派遣受け入れ期間制限の撤廃

 派遣受入期間の制限のあるいわゆる自由化業務について、現在は3年を上限としているが、これを撤廃する。

 

物の製造業務派遣の派遣受け入れ期間制限の撤廃ないし延長

 製造業務の派遣受入期間は2007年まで1年とされているが、この受入期間の上限を撤廃する。

 

派遣禁止業務の解禁

 港湾運送業務、建設業務、警備業務、医療業務については現在労働者派遣は禁止されているが、これを解禁する。

 

士業者派遣の解禁

  弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、行政書士は労働者派遣の対象とされていないが、すべての士業について労働者派遣を認める。

 

派遣労働者の直接雇用申込について厚生労働大臣が行う指導及び助言に関する規定の見直し

 派遣受入期間の制限を超えて労働者派遣の役務の提供を受けた場合、派遣労働者の希望による場合を除いて期間の定めのない雇用をするよう助言、勧告できるという、労働者派遣事業関係業務取扱要領を削除する。

 

労働者派遣法上のいわゆる26業種の見直し

 あらゆる業務において派遣制限期間を撤廃するとともに、26業種についても、現状の実態にあったものとなるよう内容を見直す。

 

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分の見直し

1)単に肉体的な労働力の提供でないことが請負事業の条件とされているが、この条件として自己の責任・負担で調達した機械設備、材料等で業務を処理することが規程され賃貸借契約による確保までを求めているがこれを撤廃すること。

2)請負業務に要する関連費用の無償提供を認めること。

 

労働者派遣事業における「複合業務」の受入期間制限の判断基準の見直し

 派遣受入期間の制限の無い業務とある業務をあわせて行なう場合、主たる業務が派遣受入期間の無い業務であれば全体として派遣受入期間のない業務と取り扱うこと。

 

労働条件の明示の方法にかかる電子メール等の解禁

 労働条件の明示方法について、書面で交付することが義務付けられているが、これを電子メールでも可能とする。

   

労働保険事務の見直し

 現在事業所単位での労働保険の適用を、包括的一括申請制度を導入し、可能な限り本社で一元的に処理できるように改める。

 

特定求職者雇用開発助成金の給付条件の緩和

 給付条件として、公共職業安定所または一定の要件を満たす無料・有料の職業事業者の紹介によると限定されているが、いかなるルートであろうと受給を可能にする。

 

解雇の金銭解決制度の導入

 解雇の金銭解決の導入について、職場復帰より金銭解決を求める当事者の意向を反映させ、紛争解決の選択肢を増やす。

 

ホワイトカラーエグゼンプション制度の早期導入

 管理監督者に限らず、裁量性の高い労働者などについても労働時間規制の適用除外とする。

 

1年単位の変形労働時間制における変形期間途中の異動者の時間外清算に関する適用除外

 変形期間途中の異動者や退職者について現行では賃金精算が必要であるが、これを撤廃する。

 

1年単位の変形労働時間制の規制緩和

1)労働日労働時間の決定を30日前から1週間前に緩和する。

2)連続して労働させられる日数を6日から12日にする。

3)対象期間が3ヶ月を超える場合の労働時間週48時間超にかかる規程を撤廃する。

 

管理監督者に対する割増賃金支払義務の見直し

 管理監督者に対する深夜割増賃金支払義務を撤廃する。

 

労働時間に関する規定の適用除外者の範囲拡大

 管理監督者の範囲について現在の企業の実態に見合うように対象者を拡大する。

 

企画業務型裁量労働制に関する対象業務の拡大および手続の簡素化

1)対象業務の制限を撤廃しホワイトカラー全般に適用する。

2)企画業務型裁量労働に関する報告書の提出を半年ごとから1年ごとに改める。

3)労使委員会の設置義務を撤廃する。

4)事業場ごとではなく全社統一の労使委員会の決議でも制度導入を可能にする。

 

従業員の個人情報の第三者提供に関する扱いの見直し

 従業員の個人情報の第三者提供について個別同意を必要とせず、就業規則等による包括同意で可能にする。

 

女性の坑内労働禁止規定の見直し

 女性の坑内労働禁止規定の撤廃を行い、女性の坑内工事監督業務を可能にする。

 

深夜の割増賃金規定の見直し

 深夜割増率を撤廃し、時間帯による割増率の格差をなくす。

 

時間外労働の上限が2時間に制限される健康上特に有害な業務の見直し

 具体的業務の見直しと不要な業務の削除を行う。

 

有期労働契約に関する雇用期間の上限の延長

 現在の有期労働契約者の雇用期間の上限は3年(専門知識を有する場合は5年)であるがこれを一律5年とする。

 

衛生管理者の巡視頻度の自主的運用の推進

 現行では「毎週1回」の巡視義務があるが、これを事業場の実情にあわせて自主的に運用できるようにする。

 

衛生委員会の開催に関する特例措置

 法人ごとに独立した衛生委員会の開催を義務付けられているが、一定の要件を満たす場合は、各法人の衛生委員会を統合して開催することを認める。

 

 当然ながら、かなり使用者寄りの要望事項となっています。あくまでも要望事項ですからこれがそのまま成立するというものではありませんが、雇用労働に関する分野の論点であることは間違いがありません。

                                                         (神谷篤史)