在宅勤務者の労働時間とは!?

 最近は、情報技術の進歩により、自宅で仕事を行う“在宅勤務者”が増加しています。在宅勤務で行う仕事の内容にもよりますが、自分の好きな時間帯に業務を行うことができますし、通勤の煩わしさもありません。育児や介護を抱える労働者にとっては、自宅で勤務できるということは魅力的なワークスタイルでしょう。
 
 今回は今後も増加が予想される在宅勤務者に関する様々な法的取り扱いについて、紹介したいと思います。



 在宅勤務者の仕事場は、使用者の管理が及ばない労働者のプライベートな場である自宅であるため、その労働時間の把握が非常に難しいというのが現実です。そこで、労働時間を算定し難い働き方ということで、労働基準法第38条の2で規定する事業場外労働のみなし労働時間制(以下「みなし労働時間制」という。)を適用することが通達によって認められています。(平成16年3月5日付け基発第0305001号)


 在宅勤務について「みなし労働時間制」を適用する場合、在宅勤務を行う労働者は、“就業規則等で定められた所定労働時間”勤務したものとみなされることが通常です。また業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、労使の書面による協定を作成し、当該協定を労働基準監督署長へ届け出ることが必要とされます。この協定を締結することによって、協定で定める時間が通常必要とされる時間とされ、その時間を労働したものとみなされることになります。(労働基準法第38条の2)


 以上のように労働時間の把握を行うことになりますが、在宅勤務について「みなし労働時間制」を適用する場合であっても、労働したものとみなされる時間が法定労働時間(1日8時間)を超える場合には、時間外労働に係る三六協定の締結、届出および時間外労働に係る割増賃金の支払いが必要となります。また、現実に深夜に労働した場合には、深夜労働に係る割増賃金の支払いが必要となりますので注意が必要です。(労働基準法第36条および第37条)


 上記のように在宅勤務者については、事業場外みなし労働時間制の適用が認められていますが、かといって労働時間自体の把握を行わなくて良いという問題ではありません。在宅勤務については労働時間や勤務場所についての自由が広範に認められる一方で、その成果についての責任が非常に強く求められます。よって、成果の把握と同時に、それに投入した労働時間の把握や管理を行い、過重労働による諸問題を防止することが重要です。具体的には、業務の内容および投入時間を日報等において記録させ、会社側では定期的にその状況の把握と対応をに努める必要があるでしょう。


(労働時間チーム)



参考1:労働基準法第38条の2
 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。
2 前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。
3 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

参考2:労働基準法第36条
 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない。
2 厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。
3 第1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。
4 行政官庁は、第2項の基準に関し、第1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。

参考3:労働基準法第37条
 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
3 使用者が、午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
4 第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。