退職金単行本プレビュー第2回「新退職金制度 基本方針の検討」

 本日は昨日に引き続き9月に発売予定の退職金単行本(タイトル未定:日本法令)のプレビューとして、原稿の一部をご紹介しましょう。今回は実際の退職金コンサルティングの初回として、新退職金制度の基本方針を検討します。






大熊コンサル:
「おはようございます。それでは本日から退職金制度の見直しを進めていきましょう。」
服部社長:
「よろしくお願いします。」
大熊コンサル:
「さて、現状分析は前回行いましたので、本日は新退職金制度の基本コンセプトを検討していきたいと思います。いくつかの質問をしていきますので、頭を柔軟にして考えてみてください。
服部社長:
「お手柔らかにお願いします。(笑)」
大熊コンサル:
「分かりました。(笑)それではまず最初の質問です。そもそも御社には退職金制度は必要でしょうか?」
宮田部長:
「どのような質問かと思えば、いきなり前提を覆すような質問ですね。(笑)退職金は必要か、ですか。」
大熊コンサル:
「御社の退職金規程を拝見しましたが、その施行日は昭和40年頃になっていました。それ以来、約40年近くも抜本的な改定がなされていません。たぶんその当時と現在を比較すると、御社を取り巻く経営環境も、置かれているポジションも大きく変化しているはずです。よって一度ゼロベースで退職金のことを考えてみましょうという意味です。質問を言い換えれば『もし退職金制度が必要だとすれば、どのような理由で必要でしょうか』ということになります。」
服部社長:
「当社にとって退職金が必要かどうかなんて、これまでまったく考えたことがなかったな。退職金は親父である会長が昔、知り合いの経営者から規程の雛形をもらってきて、それをほとんどそのまま当社の退職金制度にしたと聞いています。私にしてみれば、この会社に入る前からあったものなので、あって当たり前としか思っていませんでした。そもそも必要かどうかと直球で聞かれると、意外に答えが出ないものですね。」
大熊コンサル:
「40年に1回のことですから、たまには退職金のことをしっかり考えてみましょう。(笑)そもそも退職金制度というのはなくても良いのです。六法全書を見ても『退職金を支払わなければならない』と書かれた法律はありませんし、最近は退職金前払制度といって、既存の退職金制度を廃止し、その相当額を毎月の給与に上乗せして支給する会社が増えています。それに最近のベンチャー企業で従来型の退職金制度を持っている会社はほとんどありません。もっとも御社では既に退職金制度がある訳ですから、続けるにしても廃止するにしても、十分な検討を行って、その基本コンセプトを明確にすることが重要になります。」
服部社長:「いま退職金前払制度という話がありましたが、中小企業でも増えているのですか?」
大熊コンサル:「徐々に増えていますが、まだまだ少数派でしょう。」



 退職金制度の選択は1)退職金制度の存否、2)貢献度反映の有無、3)確定給付型/確定拠出型の選択という流れで進んでゆきます。以上はその中の1)に該当しています。このあと、前払い制度や確定拠出型年金の検討を通じ、退職金制度継続の有無を煮詰めていく内容になっています。


(大津章敬)