退職金単行本プレビュー第3回「新退職金制度の基本設計」

 本日も引き続き9月に発売予定の退職金単行本(タイトル未定:日本法令)のプレビューとして、原稿の一部をご紹介しましょう。今回は新退職金制度の方向性として、中退共を活用した確定拠出型退職金制度の採用を決定し、その具体的な設計を行うというパートになります。





服部社長:
「大熊さん、おはようございます。前回の会議は質問攻めで、頭をグルグル掻き回されたような気分でしたが、今日もグルグルですか?(笑)」
大熊コンサル:
「いえいえ、今日はグルグルしませんから大丈夫ですよ。(笑)本日は前回の方針に基づき、具体的な退職金制度の設計を行っていきます。それでは検討に入る前に前回の決定事項を確認しましょう。」
 そう話すと、大熊は用意してあった資料を取り出した。
■資料 今後の退職金制度の基本方針■
[3つの基本ポイント]
 ①退職金制度は維持する。
 ②退職金の支給額には在職中の貢献を反映させる。
 ③会社としては退職金の運用リスクはできるだけ抑制し、安定した制度運営を行いたい。


[退職金制度改革の方向性]
 ①今後の退職金は適格退職年金の資産を中退共に移管し、今後は資格等級ごとに中退共
  の掛金を設定する確定拠出型の退職金制度を採用する。
 ②定年退職の場合に限り、別枠で定年退職加算金を支給する。


大熊コンサル:
「前回の決定事項はこのようになっていますが、よろしいでしょうか?」
服部社長:
「ええ、結構です。」
大熊コンサル:
「それでは本日は以上の基本方針を受けて、具体的な制度設計に入りましょう。中退共を活用した確定拠出型退職金制度を設計するためには、資料○にある3ステップの事項を検討することになります。」
■資料 中退共利用確定拠出型退職金制度の検討ステップ■
 ①モデル昇格年数の設定
 ②資格等級毎の中退共掛金の設定
 ③定年退職加算金制度の検討」
大熊コンサル:
「以上3ステップについて、早速順番に検討を進めましょう。まずは①のモデル昇格年数の設定です。今回は退職金の支給額に在職中の貢献度を仕組みとして反映させるため、資格等級毎に中退共の掛金を設定していきます。この設計を行うため、まず以下の3つのモデルを作成しましょう。
 [最速モデル]もっとも順調に昇格する者のモデル
 [標準モデル]標準的な評価を得て、標準的なスピードで昇格する者のモデル
 [最遅モデル]補助的職務を担当するなど、もっとも遅いスピードで昇格する者のモデル
宮田部長:
「モデルであれば3年前の人事制度改定の際に作成しましたので、資料があります。今回の3つのパターンとは少しまとめ方が異なりますが、概ね援用すればこんな感じになりそうですね。」


 そう話すと、宮田は立ち上がり、ホワイトボードにモデル昇格年数を書き始めた。


(大津章敬)