退職金単行本プレビュー第5回「適格退職年金解約のスケジュール確認」

 本日は9月に発売予定の退職金単行本プレビューの5回目(最終回)です。適年コンサルの中でもっとも重要なパートの1つが生命保険会社など幹事会社との折衝およびスケジューリングになります。最近は幹事会社自身が中退共などへの切り替えの支援を行っていますが、社会保険労務士など外部の専門家がここに入ることによって、その企業にとって客観的な解決方法を提示し、最適な制度改革を行うことができると考えています。今回はその折衝のパートをご紹介しましょう。(退職年金規程の解約時按分基準の変更というテクニカルな取り扱いを行っている部分になります。)




大熊コンサル:
「それでは順番に今後の流れを確認しながら、スケジュールを確定していきましょう。適年から中退共への引継を行うためには、最終的に新日本生命様より「証明書」という書類を発行して頂き、それを添付して中退共の加入手続きを行うことになります。9月より新退職金制度を施行予定ですので、当面のゴールを9月10日に(16)の証明書受領が完了しているというところに設定したいと思います。」
生保佐藤:
「分かりました。」
大熊コンサル:
「それに向けてのスケジュールですが、まず[(1)適年解約の意思表示]は本日、この場でさせて頂いているので既に完了しています。次に[(2)中退共加入書類取り寄せ]ですが、こちらについては申請書類を事前に中退共のホームページで取り寄せておきましたので、こちらに記入をして、後ほどFAXしておいて頂けますか?」
宮田部長:
「分かりました。」
大熊コンサル:
「(3)適年解約必要書類の受領ですが、この点についてはこれまでお話していないことがありますので、ここで補足します。以前、退職金診断報告会を行った際に積立不足の金額についてお話しましたが、実はあの表(○ページ資料2参照)を詳細に見ていきますと、適格退職年金からの解約返戻金が、退職金規程の要支給額を上回る社員がいるのです。」
服部社長:
「あれだけ大きな積立不足があったにも関わらず、要支給額を上回る社員がいるのですか?」
大熊コンサル:
「ええ、例えば社員番号48番の北村さんですが、基準日現在の退職金支給額は会社都合で212,800円、自己都合で106,400円ですが、適格退職年金の解約返戻金は309,922円とこれらの金額を上回ってしまっています。これは解約時に限って発生する不都合なのですが、退職金規程と退職年金規程のちょっとしたズレに原因があります。退職年金規程を見ると、第○条に解約返戻金の分配についての定めがあり、それによれば適格退職年金を解約するときには、その解約返戻金を責任準備金に比例して配分すると規定されています。責任準備金とは、各社員に将来退職年金を支払うために現在積み立てておく必要がある金額ですが、これは退職金規程の金額と同一ではありません。そのため、特に勤続年数が短い社員について、こういった逆転現象が発生してしまうのです。」
服部社長:
「なるほど。大きな積立不足がある社員がいる一方で、逆転してしまっている社員がいるというのは望ましくはないですね。これについてはどうしようもないのでしょうか。」
大熊コンサル:
「対策はあります。ただこれは新日本生命様に相談に乗って頂く必要があります。」
生保佐藤:
「退職年金規程の変更ですね?」
大熊コンサル:
「そうです。この問題は、先ほどの退職年金規程の条文を変更することで解決されます。但し、その場合には、この規程変更に関する被保険者全員の同意をもらう必要があります。佐藤さん、この対応は可能でしょうか?」
生保佐藤:
「ええ、それほど頻繁に行われる取り扱いではありませんが、被保険者全員の同意があるのであれば、可能です。それでは本社に相談した上で、この取り扱いに必要な書式を用意させて頂きます。」
大熊コンサル:
「ありがとうございます。それでは、その書式も含め適年解約に必要な書類はいつ頃までにご用意頂けますか?」
生保佐藤:
「それでは5月末ということでいかがでしょうか。」
大熊コンサル:
「わかりました。よろしくお願いします。次は社内的なことですが、最終的には今回の退職金制度変更について、社員のみなさんからの個別同意を得たいと考えています。そのステップとして、まずは全社員に発表する前に、幹部社員への説明を行い、意見を求めたいと思いますが、近日中にみなさんが集まる場はございませんでしょうか?」
宮田部長:
「毎週月曜日の朝に管理職全員参加の経営会議を行っています。そこで説明するということでどうでしょうか。」
服部社長:「そうだな。それでは来週の月曜日の会議で説明することにしよう。」




 ということで、9月発売予定の単行本の原稿のうち、そのメインとなる小説部分を5回に亘ってご紹介しました。内容としてはこのあとももちろん続くのですが、あとは発売後、実際の書籍でお読み頂ければと思っています。この単行本については正式タイトルや発売日が決定次第、当blogやroumu.comでお伝えします。発売になりましたら、是非お手にとって頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

(大津章敬)