アスベスト(石綿)を取り扱う作業従事経験者への健康注意の呼び掛け

 最近、アスベスト(石綿)による中皮腫などの健康被害が拡大し、マスコミを賑わしています。10日ほど前の新聞報道では石綿製品をつくる会社の従業員の死者だけでも300人に迫っているというニュースを目にしましたが、今後しばらくはこうした被害の状況が拡大していくのでしょう。


 こうした状況を受け、厚生労働省はそのwebsiteで「石綿による健康被害への対応について」というお知らせを行っています。その中から、石綿を取り扱う作業に従事していた、もしくはしている方への呼びかけがなされていますので、ここでご紹介しておきましょう。



■ 過去に在籍していた事業場で石綿を取扱う作業等に従事していた方への呼びかけ
 過去に在籍していた事業場で、以下のリスト(★)に該当する作業を行っていた方は、石綿にばく露している可能性がありますので、胸部レントゲン検査等による健康診断を受けるようにしてください(その際、医師に自分が過去に石綿に係る作業を行っていた旨お伝え下さい)。なお、厚生労働省から各事業場に対し、退職者に対しても健康診断を行うよう要請を行っておりますので、過去に在籍していた事業場から健康診断の連絡等があった場合は、積極的に利用してください。また、リストにある作業に従事していた方は、発がんリスクを高めることになるので、喫煙をしないようにしてください。


 また、受診された結果、一定の所見が見られる場合(両肺野に石綿による不整形陰影があり、又は石綿による胸膜肥厚がある場合)は、最寄りの都道府県労働局に申請していただければ、健康管理手帳の発行を受け、無料で定期的に健康診断を受けることができます。また、石綿肺、肺がん、中皮腫等を発症した場合には、それが石綿にばく露したことが原因であると認められれば、労災補償を受けることができます。詳しくは最寄りの労働基準監督署へお問い合わせ下さい。
★石綿に係る作業リスト
(1)石綿鉱山又はその附属施設において行う石綿を含有する鉱石又は岩石の採掘、搬出又は粉砕その他石綿の精製に関連する作業
(2)倉庫内等における石綿原料等の袋詰め又は運搬作業
(3)以下の石綿製品の製造工程における作業 ・ 石綿糸、石綿布等の石綿紡績製品
・石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート、石綿高圧菅、石綿円筒等のセメント製品
・ボイラーの被覆、船舶用隔壁のライニング、内燃機関のジョイントシーリング、ガスケット(パッキング)等に用いられる耐熱性石綿製品
・自動車、捲揚機等のブレーキライニング等の耐摩耗性石綿製品
・電気絶縁性、保温性、耐酸性等の性質を有する石綿紙、石綿フェルト等の石綿製品(電線絶縁紙、保温材、耐酸建材等に用いられている。)又は電解隔膜、タイル、プラスター等の充填剤、塗料等の石綿を含有する製品
(4)石綿の吹付け作業
(5)耐熱性の石綿製品を用いて行う断熱若しくは保温のための被覆又はその補修作業
(6)石綿製品の切断等の加工作業
(7)石綿製品が被覆材又は建材として用いられている建物、その附属施設等の補修又は解体作業
(8)石綿製品が用いられている船舶又は車両の補修又は解体作業
(9)石綿を不純物として含有する鉱物(タルク(滑石)、バーミキュライト(蛭石)、繊維状ブルサイト(水滑石))等の取扱い作業(10)上記(1)~(9)の石綿又は石綿製品を直接取扱う作業の周辺等において、間接的なばく露を受ける可能性のある作業


■現在在籍している事業場で石綿を取扱う作業等に従事していた、又はしている方への呼びかけ
 労働安全衛生法及び石綿障害予防規則においては、事業者は、石綿を取扱う作業等に従事させていた又は従事させている労働者に対して、6ヶ月に1度、健康診断を実施しなければならないこととされています。厚生労働省より事業場に対し、健康診断の実施を徹底するよう指導を行っておりますので、現に在籍している事業場で、上記リストに該当する作業を行っていた、又は行っている方は、事業場で行われる健康診断を確実に受診するようにしてください。また、発がんリスクを高めることになるので、喫煙をしないようにしてください。





 また先週の14日、日本板硝子株式会社は労働組合と「じん肺及びアスベスト関連疾患に関する労使協定:pdf」を締結しました。これは、じん肺及びアスベスト関連疾患を早期に発見することを目的とし、健康診断の受診や各種の社内補償ルール(労災認定されない場合でも支給がある)などが定められています。この問題に対する先進的な取り組みとして注目されます。


(大津章敬)