時間外労働30分未満切り捨て処理は法律違反~マクドナルドが不払い賃金支給へ


 

 日本マクドナルドホールディングスが5月下旬に兵庫県内の労働基準監督署から「毎日の時間外労働を30分未満で切り捨てる処理は不適切だ」と是正勧告を受け、8月1日より直営2,725店で労働時間を1分単位で計算することに改めました。それにより在職、退職を問わず過去2年分の不払い賃金を支給することになりました。

 

 飲食業界で日本一の売り上げを誇るマクドナルドが今回の是正勧告を受け、過去2年分の不払い賃金を精算することは経済界全体に少なからず影響を与えることは必須で、他業界も含め、今後の動向には注意が必要です。

 





 【時間外労働等の端数処理について】

 

 時間外労働等の計算方法は1分でも労働時間であることに変わりはないため、分単位で計算すべきものです。しかし、1分単位で計算しては給与処理が煩雑になることもあり、通達では1ヶ月における時間外労働等の時間数の合計に30分未満の端数がある場合は切り捨て、30分以上の端数がある場合は1時間に切り上げる処理については労働基準法違反として取り扱わないこととされています。(昭63.3.14基発第150号)

 

 よって一般によく行われている「労働時間を15分単位(または5分単位)を切り捨て」等という処理も本来は法律違反ということになり、もし監督署の調査が入った場合には是正勧告を受けることになります。
 
 最近起こるこのような案件は、監督署の是正勧告から始まることが多いようです。労働基準法はもはや「守れない法律」ではなく「守らなければならない法律」になりました。これからの労務管理は法令遵守(コンプライアンス)をしっかり理解したうえで、監督署調査(従業員の申告)などのリスクを常に意識する必要があるといえます。

 

 

(志治英樹)