外国人労働者を雇用する際の基本ポイント

 先日、「初めて外国人の方に働いてもらおうと思っているんだけど、気をつけなければいけないこと、何がある?保険は入れなきゃいけないの?」という問合わせを受けました。外国人労働者を雇用する際に、不法滞在、不法就労、強制送還という明らかに悪意のある違法行為でなくとも、見逃してしまっている点はありませんでしょうか。今回は外国人雇用における基本的な注意事項として、以下の2点についてご説明させていただきます。
1 まずは就労可能かどうかを確認
 外国人の方は、「出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)」で定められている在留資格の範囲内において、日本国内での活動が認められています。有効なパスポートを所持し、有効な在留期間内であり、在留資格の範囲内であるとき、就労することが可能となります。これら在留資格や在留資格はパスポートの「上陸許可証印」、「外国人登録証明書」等により確認できます。これらの書類は必ず確認することが必要です。 もし、これらについての十分な知識を有せず、就労が認められない者を雇用してしまった場合は、外国人労働者本人のみならず、雇用した側にも「不法就労助長罪(3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金)」(入管法第73条の2第1項)が適用されることもありますので、十分な注意が求められます。
 
2 労働関係法令の取扱及び労働保険・社会保険等保険関係は日本人と同一
 労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などについては、外国人労働者についても日本人同様に適用されます。たとえば、労働基準法第3条は、労働条件面での国籍による差別を禁止しています。従って、賃金等労働条件を外国人であることを理由として低賃金、長時間労働等日本人と比べて低い労働条件とすることは、もちろん許されません。


 その他各種保険の適用についても、外国人ということを理由とした適用除外要件は何もありません。社会保険、雇用保険ともに所定の労働時間以上の勤務をする場合には加入させる必要があります。つまり、正社員として雇用する場合は、当然被保険者となり、パート・アルバイトという短時間労働者であっても、適用要件を満たせば被保険者としなければなりません。今年の6月頃、社会保険庁が外国語学校に対して、保険加入の一斉調査を行ったというニュースもありましたが、何らかの調査が入り、未加入が発覚すれば、原則2年間遡っての保険料負担という事態になります。そのようなことになれば、金銭面の負担はもとより、雇用関係自体がこじれかねません。正社員(常用雇用)として雇用する場合は、保険加入は本人の選択によるものではなく、条件を満たせば当然に適用されることを十分説明し、納得させなければなりません。そうでなければ適用除外となる条件での雇用契約とすることが必要です。
 
 外国人雇用というと何か特別のことのように考えてしまうかもしれませんが、1でご説明した点以外の雇用に関する諸条件については特別日本人とかわるところはありません。具体的な事例については、最寄の入国管理局、職安等にご確認のうえ、適正な雇用をしていただきたいと思います。





参照条文等:
□労働基準法第3条
 使用者は労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならない。


□在留資格の種類
①在留資格に定められた範囲で就労が認められる在留資格
 教授、芸術、宗教、報道、経営、法律、技術、企業内転勤など。その他「特定活動」という在留資格においては、ワーキングホリデー等許可の内容によっては就労が認められるものあり。
②原則として就労が認められない在留資格
 文化活動、短期滞在、留学など
③就労活動に制限がない在留資格
 永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者


□入管法第73条の2第1項
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
  一  事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
  二  外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
  三  業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者


(労働契約チーム)