西部ガス 最大4年の「自己実現休暇制度」を導入
西部ガス(福岡市)が、2005年4月にボランティアや自己啓発を目的とした最大4年間の「自己実現休暇制度」を導入したことが報じられています。報道によれば、勤続5年以上で45歳未満の社員が対象となり、勉学の内容は業務に関係なくとも構わず、復帰後5年間の勤務を条件に毎月最大20万円までの支援がされるそうです。この制度は、大阪ガスが2003年4月に導入した同名称の制度を参考に作られており、対象者の年齢制限や取得可能期間など若干の違いがみられるものの、長期のボランティアや進学を意識し、最大4年間まで休暇を認めるなど、近い制度となっているようです。
長期休暇については政府でも研究が進められており、昨年6月には「職業生活活性化のための年単位の長期休暇制度等に関する研究会による報告」が発表されています。報告書では、自由度の高い長期休暇を労働者のライフプランの多様化に対応する手段の一つとして捉えており、「人生、働き方の再設計を行う期間」として有効であると論じています。確かにまだまだ長期雇用が多く、転職リスクが高いわが国の労働者にとって、長期休暇というのはメリットある制度だと思われます。しかし企業側にとっては、代替要員の確
保や復職時の対応など多くの課題の割に、具体的なメリットが見えにくい制度でもあります。
大阪ガスがこの研究会に提出した報告書「自己実現休暇制度について」によると、社員のエンプロイヤビリティの向上と並んで、ワークシェアリング効果を期待している点が注目されます。同社の報告によるとこの制度は、背景として将来的に予想される要員ギャップの解消という大きな課題があり、自己転進支援や転籍、採用抑制などの複合的な施策の中の一つとして位置づけられています。つまり、この制度は個人の自己実現という休暇取得者側のメリットだけでなく、要員調整という企業側の要請との合致があって導入がされているわけです。
研究会は報告書の最後で、長期休暇制度の普及のためには「企業は社会的責任を自覚し、長期的な視野に立った経済活動を実践すべきものである、ということがいわば社会の常識になるといったようなことが不可欠である」とし、意識の醸成や環境整備が必要と結んでいます。しかし実は、長期休暇制度の導入促進はワークシェアリングの一部であるという大阪ガスの発想が、現実的な着地点なのかもしれません。
(労働契約チーム)