NEET(ニート)とjob cafe(ジョブカフェ)

 8月29日、文部科学省が「NEET」に対して、来年度予算の概算要求に約7億4千万円を盛り込むというニュースが報道されました。社会問題として深刻化している、就職も進学も職業訓練も何もしていない「NEET」に対して、将来の目標や職業意識を学生に持たせるためのキャリア教育を重点的に支援するというのが今回の目的であるようです。この「NEET」という言葉、最近新聞やテレビでも頻繁に登場していますが、いざ何?と聞かれたら答に困ってしまうという方もいらっしゃるかも知れません。そこで今回は「NEET」と、それに関連する「job cafe」についてご紹介したいと思います。


 「NEET」の語源は「Not in Education Employment or Training」、具体的には就職も進学も職業訓練も何もしていない10代から30代の若者を総称する言葉として使用されています。よく耳にする横文字に「フリーター」というものがありますが、「フリーター」と「NEET」との違いは、
1)「フリーター」は働いているが「NEET」は働いていない。
2)「フリーター」は、労働日数や労働時間に応じて各種社会保険等に自ら加入しているが、「NEET」は無職ですから通常、親の保険の扶養に入り、国民年金も保険料は親が負担しているか、未納を続けているかのどちらかである。


 また、「NEET」は「失業者」でもありません。「失業者」とは、
1)仕事がなく、月末1週間(調査期間)にまったく仕事をしていなかった。
2)仕事があればすぐにでも働ける状態にある。
3)調査期間に求職活動や事業開始の準備していた。
以上の3点すべてに該当して、初めて「失業者」となります。「NEET」は求職活動や起業のための準備をしていないので、「失業者」の定義にも当てはまらないのです。


 ただ、「NEET」と「失業者」は関係がないとは言えません。それは、一度就職をして、会社を辞めて失業者になり、次第に働く意欲が低下して、「NEET」になっていくケースもあるからです。例えば退職後、次の職場を探し就職活動をしていたが、不採用が続き、落ち込み徐々に就業意識が低下していくといった場合などが考えられます。世の中に希望を見出せなくなり、親や家族の収入をあてにして生活を依存していき、就職活動や勉強、職業訓練を行わなくなってしまうのです。事実、「なぜ就職活動等をしないのか」という質問に対して、「仕事をうまくやる自信がない」「希望どおりの就職先がみつからない」という仕事に対する不安や諦めの意見と、「ただなんとなく」「人付き合いが苦手、嫌いだから」という少し自信のない、言い方によっては甘えた考えの意見が多く見られています。「NEET」は働く意欲や明確な目標が持てず、無職の状態にある若者達なのですが、そこには、人格形成に係る家庭環境、学校環境、その他の周辺の環境も要因としてあるように思えます。


 総務省の労働力調査などによると15歳から34歳のニートは平成16年では64万人にのぼるとされています。統計的に中卒者、高校中退者、高卒者において「NEET]比率が高いとされています。これらの状況を踏まえ労働力不足を懸念した政府が平成15年に「若者自立・挑戦プラン」を策定し、中核的施策として打ち出されたのが「ジョブ・カフェ」です。これは若者の能力向上と就職促進を図るため、若年者が雇用関連サービスをまとめて提供する施設です。カフェに立ち寄る感覚で気軽に入って、気軽に就職に関する情報の提供を受けられたり、スタッフが疑問、質問に答えるといった支援を行っています。


 昔、子供達は、野球選手、お医者さん、パイロット、看護師さん等になりたい!!と目をキラキラ輝かせながら話していたものでした。つまり「夢」=「仕事」でした。それが今では、働くことが嫌である、つまり「夢」を持たない若者が急増しています。確かに働くことは辛いことも多いですが、それ以上の楽しみ、喜び、達成感が存在します。もっとこのことを今の若者に気付いてもらえるように、社会人として将来の日本を担う若者達に向けてアクションを起こさないといけない時期に来ているのかも知れません。


(赤田亘久)