労働契約法 報告書に見る注目事項[その3 労使委員会制度]

 近年、労働組合の組織率が低下を続けており、平成15年度以降は20%を割り込んでいる状態が続いています。またそもそも労働組合のない事業場も増加しており、今後、労働条件の決定・変更等の事項について、どのように労働者と使用者が対等な立場で協議するのかということが重要な課題であると認識されて始めています。こうした流れを受け、労働契約法においては新たに「労使委員会制度」の法制化が検討されています。本日はこの制度に関する報告書の内容をご紹介しましょう。


□労使委員会制度の法制化
 労働者と使用者との間にある情報の質および量の格差や交渉力の格差を是正し、労使間の実質的対等性を確保するためには、労働者が集団として使用者との交渉、協議等を行うことができる場が必要である。労働組合がある場合には、当然、労働組合がその役割を果たすが、労働組合がない場合においても、労働者が対等な立場で労働条件の決定・変更について協議することができるようにすることが重要であり、常設的な労使委員会の設置・活用が不可欠であるとされている。


□労使委員会制度のあり方
 労使委員会の構成についてのポイントは以下の2点。
1)委員の半数以上が当該事業場の労働者を代表する者であること
2)労使委員会の委員の選出手続を現在の過半数代表者の選出手続に比べて、より明確なものにすること
 また、多様な労働者の利益をできる限り公正に代表できるような委員の選出方法とすべきであり、また委員であること等を理由とする不利益な取扱いの禁止するといったことが指摘されている。


□労使委員会制度の活用
1)就業規則の変更の合理性の推定等に活用
 例えば、就業規則の変更の際に労働契約の意見を適正に集約した上で労使委員会の委員の5分の4以上の多数により変更を認める決議がある場合には、この変更は合理的に行われたと推定する。
2)事前協議や苦情処理の機能
 事前協議や苦情処理の機能を持たせ、それらが適正に行われた場合には、そのことが配置転換・出向・解雇等の権利濫用の判断において考慮要素となり得ることを指針等で明らかにする。


 現在、労働基準法では企画業務型裁量労働制の労使委員会の決議は労使協定に代替するものとして取り扱われています。この労働契約法制における労使委員会の決議は必要な要件を課した上で、企画業務型裁量労働制における労使委員会の決議に代替することができるとすること、また労働契約法制における労使委員会の決議に、労働基準法第36条の労使協定等に代わる効力を与えることも考えられているようです。


 近年、就業形態や価値観は多様化し、労働者個々の労働条件に関する意識も高まっています。労働者の意思が反映される労働契約法制においての労使委員会のルールが明確化されることが期待されますが、同時に実務面においては、実際にどこまで労使委員会が使用者と同等の立場で機能するのか、名前だけの労使委員会になってしまわないかといった点が危惧されます。


(労働契約チーム)