労働契約法 報告書に見る注目事項[その10 労働者の損害賠償責任]

 労働基準法第16条では「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めています。しかしながら、実際に生じた損害について賠償を請求することは、これにはあたらず、労働基準法ではなんら規定はされておりません。しかしながら、最近、留学費用の返還請求などに関するトラブルが増加しています。今回はこの実際に生じた損害についての賠償責任の負担割合に関する報告書の内容についてご紹介いたします。
□労働者の損害賠償責任
 使用者が労働者に対して行う損害賠償責任や求償についての「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度に制限されている」という限度が、具体的にどの程度の負担割合であるかを明確にすることは適当でない。労働契約が多様化している現在においては立法化は適当でないという意見があった。


□留学・研修費用の返還
 業務とは明確に区別された留学・研修費用に係る金銭消費貸借契約は、労働基準法第16条の禁止する違約金の定めに当たらないことを明らかにすることが適当である。「業務とは明確に区別された」という要件の判断に当たっては、留学・研修への参加が労働者の自発的な意思に基づくものであること、留学・研修期間中は基本的に業務上の指揮命令を受けないこと、留学・研修の内容が今後継続して勤務するあたって不可欠なものでないことなどを基準とし、これを労働基準法第16条の解釈で示すことが適当である。また、留学・研修後一定期間以上の勤務を費用返還の免除条件とする場合の期間は、5年以内に限ることとし、5年を超える期間が定められた場合には5年とみなすことが適当である。


 労働者の損害賠償責任については、過去の裁判例をみると、故意や重大な過失があるときに限って損害賠償責任の発生を認めたり、損害賠償責任がある場合でも、請求しうる賠償額を制限したりすることが一般ですが、その負担割合については個々の事案により判断されるべき内容であると思われます。一方、留学・研修費用の返還については、過去の裁判例から総合的に考えると、自由な意思に基づくものであることの確認と、研修後の早期退職の場合における研修費用等の返還範囲・返還方法に関する明確かつ合理的な規定(契約書)を整備しておくことが重要だといえるでしょう。


(労働契約チーム)