労働契約法 報告書に見る注目事項[その11 解雇一般および整理解雇]

 今回は労働契約法制のあり方における研究会報告書の「解雇一般」と「整理解雇」についてまとめたいと思います。


□解雇について
・法律で解雇要件を詳細に具体化することは現実的に困難であるが、客観的に合理的な理由となる解雇事由を分類しその基本的な類型を明らかにすることは、解雇の有効性の判断の予測可能性を向上させ、紛争を予防、早期解決するために必要である。そこで解雇は、労働者側に原因がある理由のもの、企業の経営上の必要性によるもの、またはユニオンショップ協定等の労働協約の定めによるものでなければならないことを法律で明らかにする必要が適当である。
・解雇が労働者にとって大きな不利益である一方で、解雇事案は多様かつ複雑な事実関係に基づいて行われるという事情の双方を考慮すると、解雇権濫用法理を具体化するに当たっては、客観的にそれぞれの類型において使用者が講ずべき措置を示すことについて指針等で対応することがもっとも適当である。


 具体的な解雇要件を法制化することは、解雇が複雑多岐にわたる事実関係によって行われていることから難しいとするも、解雇類型を明らかにすることで労使紛争の予防および早期解決という効果が期待されるため、解雇の取扱についての指針が出されることを要求しています。これまで解雇の争いの解決には、多くの時間と費用がかかっていましたが、こうした指針によって、ある程度の解雇事由については、その解雇が有効か無効かの判断対応が可能となり、労使トラブル回避効果および解雇トラブルの早期解決効果が期待されます。


□整理解雇について
・解雇権の濫用の判断の予測可能性を向上させて紛争を予防・早期解決するために、整理解雇について、労働基準法第18条の2にいう解雇権濫用の有無を判断するにあたって考慮に入れるべき事項として、人員削減の必要性、解雇回避措置、解雇対象者の選定方法、解雇にいたる手続等を法律で示すことが必要である。また、整理解雇の判断の考慮要素を使用者に分かりやすく具現化したものとして整理解雇に当たり使用者が講ずべき措置を指針等で示すことが適当である。使用者の講ずべき措置の内容は、裁判例の四要素、四要件を基本として次のものが考えられるが労働市場の動向を踏まえさらに検討するべきである。
1)人員削減に当たっては、これが経営上の必要性に基づき、不当な目的があってはならないこと。
2)配置転換、労働時間の削減、一時休業等の解雇回避手段を尽くし、またはこのような手段によって対処することができないため、整理解雇によるべき合理的な理由があること。なお、いわゆる非正規労働者の解雇や雇い止めをしていないことをもって正規労働者について直ちに整理解雇の必要性がないものとは解されない。
3)客観的に合理的な整理解雇対象者の選定基準を定め、実際の選定も当該選定基準に照らして合理的に行うこと。
4)労働組合がある場合には、当該労働組合との協議、労使委員会がある場合には当該労使委員会における協議を尽くし、これらのいずれもない場合には労働者全員に対する説明を尽くすこと。かつ整理解雇対象者に対しても、経営上の必要性、整理解雇によるべき理由、負担軽減措置の有無及び内容、対象者の選定基準と当該対象者の選定の理由について説明を尽くすこと。


 判例によって確立された、整理解雇の四要件、四要素(上記1~4参照)を法文化または、整理解雇に当たっての使用者の講ずべき措置の指針が示されることによって整理解雇についての判断が、労働者、使用者共につきやすくなり、これについても労使トラブルの未然防止、および早期解決に大きく貢献することと思われます。


(労働契約チーム:神谷篤史)