改正育児・介護休業法の背景
平成17年4月1日から、改正育児・介護休業法が施行されています。今回の改正は「子の看護休暇の義務化」や「一定条件下での育児休業期間の延長」、さらには関連する社会保険制度の変更など、実務面に大きな影響を与える内容となっています。そこで当ブログではこれから約3ヶ月間に渡り週末を利用して、改正の要点や実務上の疑問点等についてご紹介します。
初回となる本日はまず、育児・介護休業法が改正された背景について、触れたいと思います。
☐背景
出生率の低下、少子化進行の背景として、仕事と子育ての両立に対する負担が大きな要因であると言われています。日本では合計特殊出生率が1.57まで落ち込んだ平成元年頃から少子化に対する認識が一般的になり、90年代にかけて政府も育児休業法の施行(平成4年)やエンゼルプランの策定(平成6年)などの少子化対策に取り組んできました。
労働者の仕事と子育てを両立支援するために成立した育児休業法は、平成4年の施行から、以下のような改正を重ねてきました。
●平成7年 育児休業制度導入の完全義務化
●平成11年 育児を行う労働者の深夜業の制限など
●平成14年 育児休業取得者等に対する不利益取扱いの禁止
育児等を行う労働者の時間外労働の制限など
平成16年度の女性雇用管理基本調査によると、女性の育児休業の取得率は70.6%まで上昇しています。しかし一方では、仕事を続ける希望を持ちながら、妊娠・出産を機に退職する女性も変わらず存在し、働きながら子どもを育てやすい環境には未だなっていない現状があります。また、日本の平成16年合計特殊出生率は1.29となっており、アメリカ2.04、フランス1.89に比べ、先進国の中でも低い水準に留まっております。このような状況を鑑み、政府は少子化を社会全体の課題として捉え、育児・介護休業法においても、さらなる保護の拡大を目的とする改正がなされました。
厚生労働省少子化社会対策会議決定では育児休業取得率目標設定を男性10%、女性80%としています。少子化は、労働力人口の減少や社会保障制度に歪みを引き起こすなど、社会全体へ影響を及ぼします。多くの人々が仕事と子育てを両立させ、育児を社会全体で支えるしくみを早急に整える必要があることは間違いありません。