収入130万円超の場合の健康保険の扶養者認定

 政府管掌健康保険に加入している事業所では、社会保険加入者の被扶養者調書の提出が終わり、そろそろ年末調整の準備に入っている時期だと思います。事業所によっては社会保険事務所から扶養者の認定を巡っての問い合わせが入ってきているところもあり、暫くは落ち着かない日が続くかもしれません。


 さて、今日はその健康保険の扶養者の認定について、間違って解釈をされやすい、しかし現実的には十分にあり得る事例を紹介したいと思います。


 健康保険の扶養者の認定を受けるには、「将来に渡って収入が130万円(障害者または60歳以上であれば180万円)を超えないこと」という要件を満たす必要があることは一般的にも広く知られています。ところが、この水準を超えた場合であっても扶養者として認定される場合があります。例えば、以下のような事例です。
【事例】
□社員(A)の母親(B)を扶養者として手続きをしたい
□Bは65歳で近くで一人暮らしをしている
□Bは老齢年金として年間90万円を受給している
□AはBに対して生活費補助として月額10万円(年間120万円)を仕送りしている


 上記の場合、数字だけをみるとBの収入は年間210万円であるため、被扶養者として認定を受けることはできないのではないかと考えられます。ところが、社会保険事務所による判断基準では、別居している親族を扶養者として認定をする場合には、以下のように扱われるため、結論としては130万円(障害者または60歳以上であれば180万円)という水準を超過しても扶養者として認定を受けることが可能となります。
[扶養者として認定を受けることができるケース]
 以下の1)および2)を満たしている場合には、扶養者の年収は問わず扶養者として認定を受けることができる。
1)対象者の年収が130万円(障害者または60歳以上であれば180万円)未満であること
2)被保険者からの仕送りが対象者の年収以上であること
[扶養者として認定を受けることができないケース]
 以下の1)および2)を満たしていたとしても、扶養者として認定を受けることができない。
1)対象者の年収が130万円(障害者または60歳以上であれば180万円)未満であること
2)被保険者からの仕送りが対象者の年収以下であること


 核家族化が一般的になっている現在、上記のようなケースは十分に発生するでしょう。実際に、仕送りは本人申請によらなければわからない部分もあるかもしれませんが、社員から相談を受けた際には、年収130万円(障害者または60歳以上であれば180万円)という数字に捉われすぎることなく、「主として被保険者の収入によって生計を維持している」という大原則を忘れないようにしたいものです。


(服部英治)