「褒める」と「叱る」を相殺しない

 今日は部下に対しての褒め方、叱り方についてお話したいと思います。


 例えば、佐藤営業部長の下に田中という部下がいたとします。田中の成績は中の上程度で「もう一皮剥ければ….」という状況が続いていたのですが、日頃の努力が実を結び、初めて月間売上トップという成績を収めました。佐藤部長は、ここで田中を褒めなければと思った矢先に、田中から顧客から重大なクレームを受けたという報告を受けました。佐藤部長はそのクレームに関して、田中に厳重な注意を行い、成績トップについて褒めるという点については、うやむやになってしまいました。その後、田中はすっかり落ち込んでしまい、営業成績はみるみる下がってしまいました。


 当たり前のことですが、褒めることは「良い部分を指摘すること」、叱ることは「悪い部分を指摘すること」ですが、この2つが上司の頭の中で無意識に相殺されてしまうというケースがよく見られます。しかし、この2つを相殺してしまうと、部下はどういった行動が評価され、どのような行動が問題なのかが分からなくなってしまいます。また部下自身が考えていた自己評価と、上司の評価の間にズレが生じ、部下のやる気を削いでしまう危険性もあります。先ほどの事例では、田中は「成績トップを取ったのに褒められなかった」と嘆き、仕事に対するやる気が下がってしまったのでしょう。


 上司と部下と関係においては、「褒めること」と「叱ること」はもっとも重要なコミュニケーションであるといっても過言ではありません。褒めるべきことはきちんと褒め、モチベーションを高めるよう心掛ける。叱るべきことはきっちり叱り、後に引かないようにする。この積み重ねが大切です。なお、褒めるべきことと叱るべきことが同時に起こった場合には「まず褒めて、叱り、最後にまた褒める」ことを意識すると良いでしょう。最後に褒めることにより、部下の気持ちを前向きにさせて会話を終えることがポイントです。先週もお話しましたが、まずは小さな一歩から。効果的な褒め方、叱り方を意識してみましょう。


(志治英樹)