一般企業でも参考になる医療機関におけるプリセプター教育

 「新卒社員の人材の教育方法がわからない」という相談を、企業経営者や人事労務担当者から頻繁に受けるようになりました。多くの中小企業では、入社時に特別な教育制度が用意されているわけでもなく、外部の新入社員研修に一時的に参加させる程度で、その後の能力の伸長は、本人の努力や意欲に任せている傾向にあります。もちろんOJTは行うものの計画的でない場合が多く、いつの間にかウヤムヤになってしまい、複数の新入社員を受け入れた場合には、社員間での能力の伸長等において著しい差が生じることも珍しくありません。何とかその差を是正し、全体的に一定水準以上の能力が身につくようにと、コンピテンシー(優秀な社員の行動特性)を織り交ぜた人事評価制度を導入してみたりするものの、教育や育成という視点が欠落し、なかなか質の向上に繋がらないということが多いのではないでしょうか。


 そのような企業にとって、医療機関の教育制度は大変参考になります。医療機関の現場では、新入職員であっても、ミスのない一定水準以上の技術や能力が求められるため、様々な教育制度が導入されています。


 例えば、プリセプター教育という制度がありますが、これは、3年生クラスの職員が指導役となり新入社員にマンツーマンで一定期間指導するもので、多くの医療機関で導入されています。教育プログラムは、一定期間終了後には、確実に新入職員が一定水準以上の能力や技術が身についていることを狙い策定されており、随時指導役であるプリセプターは、進捗報告や問題点の報告を行うことでスムーズにプログラムを消化することができます。一方で、不定期に5年生から10年生クラスのベテラン職員が、新入職員に対してプリセプターの教育方法についてヒアリングを行い、プリセプターの評価を行います。このような方法により、新入職員は一定期間終了後には、求められる能力や技術が身についているのみならず、プリセプターのリーダー養成にも繋がり、更にはベテラン職員が必要以上に新入職員の行動等に振り回されることもないため、高い効果を挙げている医療機関が相当数あります。


 このプリセプター教育ですが、医療機関に限定された教育制度でもなく、一般企業においても多少のアレンジは必要なものの十分活用できるのではないかと考えます。人事評価制度の導入などと合わせ、是非検討されてみては如何でしょうか?


(服部英治)