冬の「ボーナス」最前線。中小企業の賞与はこう決める!
まもなく12月、冬季賞与の支給時期となりました。各種の統計(下記リンク参照)を見ると、今年の大企業の冬季賞与は、業績が好調な製造業が相場を牽引し、過去最高の支給水準という結果になっています。これに対し中小企業では企業間格差が大きく、過去最高水準の賞与を支給する企業がある一方で、何年も賞与支給を停止している企業もあり、相場そのものが成り立たない状況になっているというのが実態でしょう。実務的にはこうした支給相場を意識することも必要ではありますが、基本的に「賞与は成果配分である」と考え、自社の経営状態にあった水準の金額を配分することが原則となります。
さて、このような状況にある中小企業の賞与ですが、今日はその支給額の効果的な算定方法についてお話しましょう。
多くの企業では「基本給の○ヶ月分」という計算式に基づいて、賞与支給額の算定が行われています。人事コンサルタントとして多くの中小企業の人事制度を見ていますが、経験的に言えば90%以上の企業で、この「基本給連動型」と呼ばれる賞与制度が取り入れられています。しかし、そもそもなぜ賞与を計算する際に、基本給と連動させる必要があるのでしょうか?
多くの中小企業ではこれまで毎年春になると、毎年の相場に基づいた昇給を積み上げてきました。その結果、基本給は年功的な運用がなされていることが少なくありません。そのため優秀な若手営業課長よりも、勤続30年のベテラン主任の方が基本給が高いというような逆転現象が発生している事例も多く見られます。このように年功的に運用されている基本給に2ヶ月といった支給計数を乗じて賞与を算定する場合には、本来成果配分であるはずの賞与までもが年功的な運用に陥ってしまうという問題点が指摘されます。よって賞与の支給額を算出する際には基本給に囚われず、もっと自由に「べき論」で考えることが重要です。具体的には今後の賞与の計算は基本給と非連動とし、人事評価結果と役職、社内の資格等級に基づいて賞与の配分表を作り、それに基づいて賞与原資を配分するといったやり方(ポイント制賞与制度)などが考えられます。
このように賞与の支給額を考える際には「会社業績から導き出された配分可能原資をどのように配分すれば、社員の貢献に対し、適切に報いることができるのか。そして、それによって社員の意欲を引き出し、最終的に会社を良くすることができるか」という視点を持った上で、柔軟に発想することが重要です。
■関連リンク
□連合「2005春季生活闘争 年末一時金 第1回 回答集計(11月18日現在)」
http://www.jtuc-rengo.or.jp/new/download/shuntou/tousou2005/ichijikin/index.html
□日本経団連「2005年年末賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況[第2回集計]」
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2005/089.pdf
(大津章敬)